耽美にすらみえてしまう資本主義の、アポカリプスなう

公開日:2014/9/19

資本主義の終焉と歴史の危機

ハード : Windows/Mac/iPhone/iPad/Android/Reader 発売元 : 集英社
ジャンル:教養・人文・歴史 購入元:紀伊國屋書店Kinoppy
著者名:水野和夫 価格:648円

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 あまりの明快さに、うっとりしてしまうほどの本書。一気に読了しました。確かに、言われてはいる「資本主義の限界」。その歴史とからくり、将来への展望を素人にも本当に分かりやすくまとめてある好著です。

 資本主義の「終わりの始まり」はすでに70年代に始まっていること、資本主義はつねに「中心」と「周辺」に二分され、周辺から中心へと富を「蒐集」するという性質のもとに成り立って来たこと。ベトナム戦争の結果、アジアにさらに「周辺」を広げることが制限されたアメリカが、時間的空間的成長を阻められて90年代から電子的な金融空間での利潤を上げることに集中した経緯。インターネットの普及と相まって、資本の往来に国境がなくなったこととその危険。グローバリゼーションという一見ポジティブな経済の世界的連動は結局は一国内にも格差を広げるからくりにもつながること。ヨーロッパがユーロを導入することで目指すもの…等々。

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 「歴史は繰り返す」のですから、著者は過去の同じような状況を探り、利子率が2%を下回った「長い16世紀」にその類似を見いだします。それでは、歴史にならって、現在の資本主義に救いはあるのか、このシステムが「ソフトランディング」で終わるためにはどんなことが必要か、という解説はお先真っ暗感満載な資本主義という怪物に一筋の光を与えてくれます。

 何世紀も続いて来たひとつのシステムが終わるかもしれない、微妙な瀬戸際に生きているということを実感することしきり。経済は数字ではなく、人間の性質と業(ごう)に深く関わっているという感覚もしてきます。下手なミステリーよりもぞくぞくするような1冊。バブルも、その後の不況も生きて来て、そして今も一生懸命働いている中高年にお薦めしたいです。

 


そうなんです。日本も世界もみな「成長教」の信者でした

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