イクメンは幻想!? 妻も期待しすぎ!? 果ては産後クライシス? 夫婦が危機に陥る「産褥期」を直視しよう

更新日:2015/9/29

産褥記 産んだらなんとかなりませんから! (カドカワ・ミニッツブック)

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著者名:吉田紫磨子 価格:※ストアでご確認ください

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 妻「結婚したら、家事も育児も一緒にやろうねと彼と約束していたのに、いざ結婚したら全然違った!(激怒)」というのは、残念ながらわりとよく耳にするフレーズだ。

 これが、結婚(再婚含む)6か月以上3年以内の夫婦が登場する、日曜午後のトーク番組『新婚さんいらっしゃい!』だったら、桂文枝の絶妙な素人いじりで爆笑に変わるのだろうが、現実はそうはいかない。

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 夫婦が子どもを授かったら、避けては通れない魔の期間がある。その名も「産褥期(さんじょくき)」だ。

「褥」という文字が間に入っただけでいかにもおどろおどろしい響きと字面になり、気分も沈みそうになるが、産褥期とは、本来出産後、母体が回復するまでの期間のことを指し、それは通常6~8週間だという(『デジタル大辞泉』より)。そして、その期間はできるだけ体も心も休ませなければならないのだが、産まれたての子どもも、夫も、とりまく環境も、そうはさせてくれないのがキビシイ現実。自称・妊娠出産産後オタクであり、産後セルフケアインストラクターとして、母子保健を支えるNPO法人「マドレボニータ」で活動する吉田紫磨子氏が、自身の2度目の産褥期体験を赤裸々に実況中継したブログを書籍化した本書から、その実態を探ってみよう。

 著者の紫磨子氏によると、このわずか6~8週間の間に、結婚前は想像だにしなかったできごとが次々に起こる。出産を経験したことで妻の体はボロボロになり、疲労から回復するのに時間がかかり、体型はくずれてメンタルも弱り、産後うつなどにのみこまれやすい状態に至ってしまう。夫の理解や思いやりが足りなければ、心の中は手負いのメスゴリラのごとく荒々しい様相を呈してしまうのだが、しかし実際には、その辛さを口にすることもできないほど憔悴しているという切なさ。

 一方、産後の妻をとりまく状況や変化について、予備知識がまったくない夫は、恐ろしく機嫌の悪い妻にただただ怯え、最愛の女性がいったいいつからこんなにも気難しく扱いにくい存在になってしまったのだろうとおろおろし、そして妻を助けるどころか、遠ざける。そんな魔の時期を予期していなかった夫婦が至る最悪のシナリオが、産後クライシスだ(出産を契機として夫婦仲が悪化する現象。「Wikipedia」より)。「わかってくれない夫」「期待できない夫」を許せない気持ちによる産後クライシスは、10年以上引きずるほど深い恨みとなって妻の心に刻まれるというから、恐ろしい(ちなみに本書には著者夫妻が、長女出産時の産褥期体験をふまえて、双方の努力により、次女出産後の危機を回避しようとする姿が記されている)。

 本書を読む女性は「げっ。産んだら私、こんなになるの!?」と驚愕し、男性は「う~、申し訳ないけど、ドン引くわ」と、双方げんなりする部分もあるかもしれない。しかしそこをあえて目をそらさずに、できればカップルそろって最後まで読んでいただきたい。そして本を間におき、自分たちに将来起こりうるかもしれない事態を見つめ、そしてそのとき何ができるか。妻は自身に起きる変化を理解・自覚し、夫は出産後妻のために休暇をとれる環境にあるのか、サポートしてくれる人は誰かいるのか、産後クライシスを回避するための具体策など、ふたりでシミュレーションしてみてほしい。

 心理学では“自分と他者は、価値観や行動パターンがそもそも違う”ことを認識することを「自他を区別する」と表現する。しょせん男と女は、肉体も思考回路も異なる生き物。自他を区別すべきと頭ではわかっていても、やはり相手にどこか期待をしてしまうから、ややこしい。

 これからパートナーを探す人は未来の予習として、そして結婚を予定しているカップルや、現在妊娠中の夫婦はぜひふたりで本書を読み、お互いに相手を責めない、思いやりの構えを準備してみてはどうだろうか。それでも、やっぱり、ややこしいことになってしまうかもしれないけれど、なんの策もなしにそのときを迎えるより、かなり違うと思うのだ。産褥期、あなどるべからず。

 


本書には、著者の夫・良雄さんによる、“夫目線の産褥期振り返りコラム”も設けられており参考になる

経験者にしかわからない「産褥期の体のつらさ、どうケアすればいいの!?」という悩みに応えるべく、セルフケア系エクササイズのコーナーも

「マドレボニータ」代表・吉岡マコさんによるコラムでも、「産後をどう養生すべきか」のポイントをアドバイス