おかしみあふれていとおしい、コミカルな図書館青春小説
更新日:2012/3/2
夢をあきらめ、さしたる目標もないまま、なんとなく教職をとって高校に赴任した清。
なぜか、文芸部の顧問に任命されたのをきっかけに、熱意もやる気もなく、なげやりだった清は、少しずつ、本来の自分をとりもどしていく…たった一人の文芸部員・垣内くんと、なげやりなのにどこか生真面目な清のかけあいがコミカルに描かれた、図書館青春小説。
傷ついた心の再生小説、といってしまえばそれまでなんですが、このお話、とにかく笑えます。二人の会話が、清のなげやりっぷりが、迷走加減がおかしくて。
ぽっきりなにかが折れて、「清く正しい」人生をやめたところで、主人公の清は根がまじめ。それゆえ、何かが少しずれている。
それは垣内くんも同じです。
傷ついた心を、過度にとりさたすのでもなく、かといって無視するわけでもなく、少しずつ撫でながらまっすぐ進んでいこうとする清の、一方で、不倫に走ってみたりわかりやすく迷走して哀しさに鈍感になろうとしている様子が、とてもとてもいとおしかったのでした。
大人びて、やっぱり生真面目でちょっとずれてる垣内くんとの、会話を何度も読み返して笑いました。
なんだか肩の力が抜けます。そして読み終わったあと、なぜだかとても晴れやかなのです。
収録短編『雲行き』もテイストは似ていますが、わたしは表題作のほうが好き。
目次で、収録短編「雲行き」と選べます。どちらを先に読むのも自由
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画面固定はわたしにとって、電子書籍を読むときの必需機能です