必ず料理が作りたくなる! 香り立つレシピ本
更新日:2012/3/7
『真説石川五右衛門』で第24回直木賞も受賞している無頼派・檀一雄による「料理レシピ本」。
食エッセイなのかと思いきや、正真正銘レシピ本。
淡々とレシピが綴られている。
幼いころに母が出ていき、料理を作るのは檀少年の仕事になった。当時はまだ電化製品が流通していない。檀少年はカマドや七輪を使い、料理を作りだす。
さまざまな店で買い出しを行い、さまざまな地域をさまよい、その土地ならではの料理を見よう見まねで試してきた檀氏。レシピからは、自分なりに工夫を凝らし、そして丁寧に料理をしていたことがうかがわれる。読んでいるだけで料理がしたくなってくる…それはきっと書かれているご本人が料理を楽しんでいたからなんだろう。
本来、レシピ本は、分量がきっちりと書かれてあり、何より「作ってみようかな」という気を起こさせるのは料理の写真である。この料理の写真がおいしそうでなければ、スルーしてしまうだろう。しかし、この『檀流クッキング』に写真はない。文章だけだ。
名作で登場する料理の多くはどれもおいしそうだ。むしろ、料理がまずそう、もしくは魅力的ではない作品は、作品自体もさほど魅力がないような…(一概にはいえないけれども)。小説では限られた手法で「おいしい料理」の熱、味、香りが伝えなければならない。おいしい料理がきちんと表現できれば、たいていのことはリアルに表現できるということなのかもしれない。
四季に合わせて紹介されている料理たちは、どれも温度があり、目を閉じれば、その料理が目の前にあるようなリアルさがある。空腹のときに読むのは危険だ。この本に載っているものを作ってみたい、でも今すぐ空腹を満たしたい…という二つの欲求に心がソワソワし出してしまう。
個人的には大好物の「柿の葉ずし」があるのがうれしくてたまらなかった。ちょうど、季節は夏。レシピ片手に私も『檀流クッキング』にチャレンジしてみたいと思う。
季節が感じられるメニューたち
これを作っておせちに入れたら…料理上手が名乗れるかもしれない
気になった料理はガツガツしおりを挟んでいくのがオススメ。電子書籍だとしおりをいくらはさんでも厚くならないのがイイ