これからの「陰謀論」を考察する1冊は、情報化された現代を生き抜くための指南書でもあった!

更新日:2014/11/10

陰謀論の正体!

ハード : 発売元 : 幻冬舎
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著者名:田中聡 価格:※ストアでご確認ください

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 やっべ、陰謀論の正体、マジ知りたいんですけど。と思い立ち、行き着いたのが本書、まんまタイトルが『陰謀論の正体』であったため、イスから転げ落ちた。

 これよ、これこれ。

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 最近流行りのあのイントネーションで、「これよ、これこれ」と言っているわけではないという弁明だけはさせていただきたいのだが、一読してみると「あれよ、あれあれ」と言う間に読んでしまった。

「それ、陰謀論だし」
「オメーの顔、まじ陰謀論かよ」
「今日、ワタシ陰謀論だから、無理」
的な感じで女子高生も使い始めたかどうかはわからないが、最近よく耳にする“陰謀論”。

 その陰なる暴論を、ひと度口にすれば、「あ~この人、あっちの人だぁ」と半笑いで対応され、その後なかなか連絡がつかなくなる事態が発生しつつも、とりわけ震災以降は、以前よりも“陰謀論的”な考えが受け入れられつつあると言う。なぜこれほどまでに“陰謀論”は浸透したのか。本書では、その経緯を含めて、陰謀論そのものを綴っている。

 まず、冒頭1行目からセンセーショナルに「いまや、誰もがみんな陰謀論者だ。」と筆者は言う。「そいういう時代になってしまった」と。
いやいや、俺は違うぞ、バカやろーと思った矢先、次の行で「いきり立って反論する人は多いだろう。当然だ」とまるで見透かしたように書かれている。もしや霊の仕業か、陰謀か?

 震災以降、私たちは放射能に怯え、公式の報道に不信感を抱いている。今まで我々の土台となり信じていた事柄が、全て幻想であるかもしれないということに多くの人が気がつき始め、その危機感は怪物化した。物事の背景には何らかの策略があったのではないか、と解釈する考え方を避けられなくなってしまったのだ。それが現代のあり方なのだ。

 アイドルは一般人と変わらぬ恋愛をし、平気で屁もする。ミ○キーの中では、プー○ん似のおっさんが身をひそめているかもしれない。だが、信じられなかったことが、あるかもしれないという事実に横滑りしたとしても、短絡的に「陰謀論」というラベル貼りをすることは問題なのだ。むろん、みんながバカにするものに人は関わろうとしない。自分がバカだと思われるからだ。不都合な真実を愚論化するために「陰謀論」はプロパガンダの武器となり、くだらない、馬鹿げた論だという意味を併せ持つものになってしまった。故に、この情報戦の世界では、陰謀論であるかないかの境界線を引く事は無意味なのだ。

 自分も、シャンプーを使うと禿げる、という陰謀論を信じて、一切シャンプーを使わずにお湯のみで洗髪している。世の定説とは真逆である。もし、これで禿げたらどうしよう、と思うものの「シャンプーを使っていたら、もっと禿げてた」と言えば済むし、禿げなかったら「ほらみたことか」と言えば良いわけで、どちらに転んでも何とでも言えるわけだ。そうなるとなんだかもうめんどくさい。結局人間やれることは一つにしかないのだ。

 本書はなんでもかんでも結論を急ぎ、分かりやすい方へと転がろうとする現代社会に警鐘を鳴らしているとも言えるだろう。陰謀論を通した現代的生き方へのアプローチがつまった珠玉の一冊、ぜひとも刮目していただきたい。