滅びの道筋を描いた、伝奇アクションの傑作

公開日:2011/9/4

滅日 (1)

ハード : PC/iPhone/iPad/WindowsPhone/Android 発売元 : ぶんか社
ジャンル:コミック 購入元:eBookJapan
著者名:たがみよしひさ 価格:420円

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タイトル「滅日」は、「ほろび」と読む。作者は「GREY」「軽井沢シンドローム」を描いた、たがみよしひさ。
  
「GREY」のような遠い未来の話ではなく、現代劇ながらもSF要素の強い本作品は、作者の真骨頂ともいえよう。変身、オカルト、民俗学などが好きな人にはお薦め。

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北鳳大学、呼野生物研究所の研究助手、相賀修一と尼子全。相賀修一は女性から好かれる、華やかな好男子。一方、尼子全は地味な男。研究所長の呼野清太郎のひとり娘、呼野翔子も当然、相賀修一と恋仲である。相賀と尼子は互いに反した存在だった。そんな二人の体に、ある日、神獣鏡が宿る。変質する二人の肉体。その姿は鬼か悪魔か…。
  
二人が人外の者となり、「らぐなれく」と呼ばれる事態に発展したことにより、地上に巨大な生物が次々に出現する。生物は昆虫、爬虫類、両生類としだいに進化しているようにも感じられた。そして、最終進化系の怪物が人類の前に姿を現した時、世界は終焉に向かっていく。
  
怪物を目にした生物研究所所長・呼野清太郎の台詞がとても印象的だった。
  
「敵が自然ならば、勝っても負けても、人類は滅亡、滅日の道を歩むことになる…」
  
この台詞は、人類が今まで環境を破壊してきた代償と、人類が滅亡への道を歩むしかない事実を示しているように思えてならない。
  
物語のラスト、魔人となった相賀修一と尼子全は、「滅日」という存在になるために対決する。神と悪魔のような姿となって…。宿命ともいえた二人の対決。だが、その対決は意外な人物の仲裁で、意外な結末を迎えるのだった。
  
正直、「GREY」よりも難解に感じられたが、それにもましてラストの対決場面のすがすがしさは、ストレートに響くものがあった。
  

生物研究所での1コマ。神様が生物の成長を拒んでいるという台詞が意味深

対立的立場の組織「YAMAKO」

様々な人物の思惑が交錯する

尼子全の死体。…ということは彼の命は… (C)たがみよしひさ/ぶんか社