超カルトなペダントリーの迷宮で読者を茫然とさせる圧倒的ミステリー
公開日:2011/9/4
黒死館殺人事件 -まんがで読破-
ハード : PC/iPhone/iPad/WindowsPhone/Android | 発売元 : イースト・プレス |
ジャンル:コミック | 購入元:eBookJapan |
著者名:小栗虫太郎企画・漫画 | 価格:400円 |
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夢野久作「ドグラマグラ」中井英夫「虚無への供物」そしてこの小栗虫太郎「黒死館殺人事件」は、ミステリーにおける日本三大奇書といわれている。
いわれているだけあって、そのヘンテコぶりは3冊それぞれに、なんというかなりふりかまわず垂れ流されていて、読み終えて腰を抜かさぬものとてないありさまだが、生意気にも20代前半にして全作を読了してしまったわたしが最も魅了されその後何度も読み返すことになったのが、そうお察しの通り「黒死館殺人事件」なんである。
だけどこれ、ちゃっかりマンガになって出てるのみたとき、たとえじゃなく我が目を疑った。文庫本にして500数十ページをとてつもない迷宮に織り上げているペダントリーの嵐を、いやしかし190ページのマンガで、いやしかし。
医学博士・振矢木算哲の建てた西洋館「黒死館」は、算哲亡きあと息子の旗太郎が継いでいる。ここには4人の外国人弦楽四重奏団が、門外不出の条件で40年も住まわされているなど、奇々怪々な物事に事欠かないが、ついに残虐きわまる殺人鬼が館内の闇をさまよいはじめ、住人はひとりまたひとりと殺害されていくのだった。ちなみに「黒死」というのはペストのことである。「メゾン・ペスト」うー、住みたくねえ。
当然、名探偵というやつが登場する。その名も法水麟太郎。登場人物はもちろん、読者にも、もうたぶん誰にも理解できない蘊蓄を速射砲のように乱発し、神のごとき推理を発揮して事件を解決する彼である。哲学、宗教、魔術、人類学、紋章学、医学、薬物学、物理学ありとあらゆる奇矯な雑学が飛び交う本作を迷宮と呼んだのは決して大げさじゃないのだ。読者はそのなりゆきにただ茫然とするしかないだろう。
その茫然とする面白さが、このマンガ版でもちゃんと味わえたのだ。ビックリした。名探偵の推理というものが、究極まで鋭くなるとなにに見えてくるか、不気味な味わいというものが、とことん濃厚になるとなにが起きてしまうか、その効果までちゃんと出ている。面白かったあ。
殺害現場へ行かずいきなり紋章学談義
毒殺された死体がなんと発光しているのだ
死者・算哲からの連続殺害予言だってあるぞ
聞いたこともない病名をぶちまかし、被害者はユダヤ人だと決めつける法水。日本人でしょ、どう見ても
自動的に鍵を閉めて密室を完成させる自動人形
神意審問会とやらで活躍するのは、死刑囚の手で作ったといわれる黒魔術のアイテム「グローリーハンド」とくる (C)バラエティ・アートワークス/イースト・プレス