JAL機内誌「SKYWARD」人気連載の浅田次郎氏による珠玉のエッセイ

小説・エッセイ

更新日:2012/3/2

つばさよつばさ

ハード : PC/iPhone/iPad 発売元 : 小学館
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:電子文庫パブリ
著者名:浅田次郎 価格:507円

※最新の価格はストアでご確認ください。

旅好きの私“ぷりまべら”が、海外旅行の帰路に必ず行うことがあります。

機内誌の世界地図のページを広げ、次に旅行に行くとしたら、どこがいいかなぁと考えるのです。その旅が楽しければ楽しいほど、次に行きたいところが次々と浮かんでくるものです。地図を見終わったら、ページをパラパラとめくり、旅関連のエッセイやルポなど興味のおもむくままに読んでいきます。機内誌は写真やイラストもきれいですし、読んでいて、見ていて飽きないんですよね。

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JALの機内誌「SKYWARD」で好評連載中の浅田次郎さんのエッセイ「つばさよつばさ」が電子書籍化されていると知り、早速ダウンロードしてみました。

本書は、旅行作家に憧れ、いつのころからか1年の3分の1は旅するようになったという浅田次郎さんによる旅関連のエッセー集。そのほとんどが海外の旅先でのお話です。小説の下調べなど、仕事を兼ねた旅が多く、また機内でも締め切り間近の原稿を執筆するという著者ですが、それでも旅の楽しみを忘れることなく、旅を満喫しているさまが本書からうかがえます。

台北の街角、エジプトのピラミッド、ラスベガスのカジノ、韓国の激辛料理とそれだけ取り上げればさして珍しくもない話になりそうなものが、浅田次郎さんの気ままな旅スタイル、独自の視点により、非常におもしろい読み物になっています。単なる旅エッセーにとどまらず、世界の歴史や、世界の中での日本、日本の若者についてなど、著者の考えに触れられるのも本書の魅力のひとつ。ときには辛辣に、ときにはユーモアを交え、さまざまなことが語られます。

カジノをこよなく愛し、ラスベガスに足しげく通うさまを語った「ベガスの効用」など、著者の日常生活が垣間見られるエッセイもあります。「旅なるものの本質=自己の喪失」とする著者は、ラスベガスに行くと、「おのれはアルファベットの一文字で表記されるような、あるいはそれにすら値しない任意のひとりになる。」と語っています。この表現に「やや大げさでは?」と思いつつも、旅の魅力は、日常と自己の喪失という点に大いに同感し、私もまた旅に出たくなるのでした。

かつて夢見た「旅行作家」暮らしも、現実はそう甘くないようなのです。とはいえ、「筆を執らずにはいられないたち」という著者

ユニークなタイトルが並ぶ目次。「とっておきの料理」「ステキなステーキ」等、食べ物を扱ったエッセーもあります