対人恐怖症の妹דエニート”な兄? 自称ニートは失せろ。真正ニート兄妹のお通りである

更新日:2015/9/29

働かないふたり

ハード : 発売元 : 新潮社
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著者名:吉田覚 価格:※ストアでご確認ください

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 『働かないふたり』というマンガがどうやら人気だと聞いて「嘘つけ! どうせ自称学生ニートとか主婦ニートとか、次の職場までの仮初ニートとかいう生ぬるいカジュアルニート共だろうが!」と敵意むき出しだったのだが、本を開いてみると本当にニートだった。それも、失職して求職活動中の「努力派無職」などではなく、「働きたくない」が根底にある純正のニートなのである。

 このご時世、自称ニートの凶悪犯が溢れる腐った世界から、無垢なニートを探し当てることこそむしろ難しいのだ。今まで散々、ビジネスニートに騙されてきたこちらの繊細なハートにとっては、今回の事は実にすがすがしい案件であるゆえに感涙をもって平伏のお出迎えをせねばならぬのだ。

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 そもそも「ニート」と「無職」は定義が違う。学生ニートというのは、教育を受けている以上、矛盾した言葉なのだが、あれこれ鼻息荒く彼らを糾弾したところで、いざリアルなニートや無職を目撃したら彼らはドン引きするというのは不変のテーゼであるがために、こちらの努力は徒労に終わる可能性がある。

 『働かないふたり』は兄と妹揃ってニートをしているのだが、そこに描かれる心理は、世の一部の者達が「あるあるう!」と膝を打って賛同するようなものばかりで、「朝9時に睡眠開始」「夜も終わる時刻、窓の外を見たときについているあの明かりたちは今まで点いていたのか、それとも今点いたのか、と思いを馳せる」「無職仲間が求職開始したときの絶望感」「月曜朝の世間に対する申し訳ない感」など、大声で言いたいけど言っても馬鹿にされて終わる心情を代弁してくれている。

 けれども深刻でシリアスなストーリーではない。のほほんギャグである。兄と妹はたいてい、兄の部屋でゲームしたり、だらだらしたりしている。外に出るのは基本的に朝のゴミだしのみ。聡明で飄々とした兄と、天然ボケで対人恐怖症の妹。しっかりしているからといって働くわけではない兄、ゲームが致命的に下手で巨乳の妹がのんびり喋っている。

 彼らは「危機感のない平和なニート」などと評されているらしいが、むしろたいていのニートというものは危機感がないからこそニートなのである。働きたくない! と日々憤怒を欠かさない皆様の心を癒してくれるこの1冊。彼らがマンガの中の人物に過ぎないということは、読む際にぜひ忘れておきたい事項である。


お兄ちゃんが求人誌…!? いやだ働かないで…!

ニートの中でもエリート。名付けて「エニート」

話しかけると顔面蒼白は当たり前

「日本人ともうまく喋れないのに…外国人と話すための勉強をするの?」