暗黒の太陽JAZZのもと、繰り広げられる青春

更新日:2011/9/4

Blow Up! (1)

ハード : PC/iPhone/iPad/Android 発売元 : 小学館
ジャンル:コミック 購入元:eBookJapan
著者名:細野不二彦 価格:432円

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「さすがの猿飛」「ギャラリーフェイク」などを作ってきた、細野不二彦の作品。
  
大学のジャズ研究会でサックスプレイヤーだった菊池オサムが大学中退し、真のミュージシャンになっていく物語である。
  
ここでは、あえてプロミュージシャンでなく、ミュージシャンとしておく。これはサクセスストーリーではなく、現実に直面した若者たちのリアルな悩みを明るく描いた青春グラフティなのかもしれない。

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特筆すべきなのは、物語全般に溢れるJAZZテイストである。オサムがプレイする楽器はギターやピアノではなく、テナーサックスである。ジョン・コルトレーン、ソニー・ロリンズをはじめとした、テナーサックスの名プレイヤーは数知れない。テナーサックスとは、ジャズバンドではフロントマンをつとめるリード楽器なのである。
  
テイストはガジェットだけではない。オサムが自分に才能がないと行き詰まり、友人の誘いで、マリファナ(本当は普通のタバコ)を吸ってしまうエピソードなども、まさしくJAZZテイストなのである。
  
プロのミュージシャンの生活も、リアルに描かれている。若いミュージシャンの感覚についていくことができず、セッションすることを恐れる老いたミュージシャン。年齢制限でオーディションを受けることさえも許されない熟練ミュージシャン。
  
現在のようにDTM(デスクトップミュージック)が台頭してくる前、まだバンドマンという言葉で呼ばれていた人々の生活、苦悩は、それ自体が当時のミュージックシーン、音楽文化と言える。
  
そして劇中で、先輩ミュージシャンからオサムに投げかけられる言葉。
  
「いいミュージシャンか、つまらないミュージシャンか、ただそれだけ。上手いだけのミュージシャンはいらない」
  
これはミュージシャンだけでなく、全てのクリエイターに通じる言葉だ。暗黒の太陽のもと、名曲を生み出してきたJAZZの世界で生きていく人間の、イデオロギーなのである。
  

目次。カッコイイ!

アフリカ系アメリカ人。トランペットもJAZZのキーワード

セッションスタート。主人公のサックスがBlow Up!

プレイヤーによってインプロビゼーション(即興)が紡がれる時、音に魂が宿る

青春グラフティの一場面。80年代ファッションが、時代を語る (C)細野不二彦/小学館