ソフトでマイルドにボケる高校生たちの日々

公開日:2015/1/8

もここー

ハード : 発売元 : 講談社
ジャンル: 購入元:KindleStore
著者名:木下晋也 価格:※ストアでご確認ください

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 前後の繋がりが微妙にズレていると人は強く関心を抱きます。シュールな音楽やお笑い、小説や漫画にそんな“認知的不協和”が生まれると、普段ご都合主義展開の処理に慣れている我々は「むむっ」と心疼くもの。芸術作品の不協和を快感に感じてしまうのは普段使わない考えの回路を使うからです。

 けれど現実のほうがむしろ、意志疎通のちょっとしたすれ違いで変な誤解や無駄な時間が生まれたり、見過ごしていたところにどうでもいい勘違いが起きたりするもの。日常に何か齟齬が生じたときのとりとめのない空気、もはや「もやっとした微妙なアレ」としか表現できない痒いトコロを突く作品に私たちは「わかってるう!」と膝を叩いてしまいます。

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 と、そんなに深く考えなくてもクスッと楽しめるのが「もここー」。私立模糊高等学校・通称もここーの生徒や教師たちがこれ以上ない平凡な空気を醸し出しつつも、ちょっとズレている毎日を届けてくれます。普通代表・飯塚くん、漫画家志望・六原くん、くノ一志望・橋爪さんの3人がこの漫画の中心。

 ある朝登校した飯塚くんはいつもより眉毛が細いことを飯塚さんに指摘されます。寝坊したから時間がなかったといいながら眉ペンシルを取り出す飯塚くん。「太眉にでもしないと顔に特徴ないもんね飯塚くんは」と言われながら少し眉を太く書いて落ち着きます(でもほとんど見た目は変わらないのですけどね)。だからなんだと言われればそれまでですが、終始だからなんだといったやり取りが「もここー」の最も魅力的なポイントなのです。

 他にもユニークな生徒・教師たちが出てきますが、よく考えれば登場人物たちのキャラクター自体はしっかりしているハズなのに、派手なツッコミもなし、決めギャグもなし、いうなれば「全員がちょっと天然」くらいの笑うも笑わないも自由でマイルドな口当たり。それでも必ずクスッとしてしまうのが憎めないところ。ボケがソフトなので何度読み返しても飽きません。ニュートラルな雰囲気の中にある「痒いトコロ」を楽しめる作品です。


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