もしも「政府によって結婚相手が決められる」日本になったら…

公開日:2015/1/22

恋と嘘

ハード : 発売元 : 講談社
ジャンル: 購入元:KindleStore
著者名:ムサヲ 価格:※ストアでご確認ください

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 昨年10月に創設された「次にくるマンガ大賞」の「本にして欲しいWebマンガ」部門で3位に輝いたのがこの『恋と嘘』です。1巻では、第4話までと描き下ろしの「第4.5話」が収録されているのですが、話数はマンガボックスでの連載とは合致していません。コミックス第4話の終わりが、マンガボックスでは第15話の終わりです。

 内容についてはあちこちに書いてあるように、「16歳になった男女のカップリングを政府が独断でする世界の恋愛話」です。ずいぶん前に世間を騒がしていた某宗教っぽいですが、作中では相性を科学的に探っているという理屈もあって、そういう社会に反発する若者を描いたマンガなのかなと思ってしまうのですが違うのです。

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 第1話冒頭、主人公の根島くんはクラスメイトと一緒に「結婚しないぞ!」などと円陣を組むものの、5年来片思いをしていた高崎さんに16歳の誕生日までに気持ちを伝えようと奮闘し告白。政府通知(政府のカップリング結果)が来たら今度は通知の相手、莉々奈さんを巻き込んで建前上のパートナーの莉々奈さんと一緒に悩んだりしつつも、禁断の相手高崎さんとちゅーしています。

 本作が描くのは、そういう意味で社会制度に反発する若者というよりは、親公認の親身になってくれる妹みたいな子と、気持ちが通じているのかどうかあやふやな、あこがれのあの子の間で揺れている青年の姿です。『オレンジロード』っぽい構造ではありますが、根島くんは便利な能力で周囲をたぶらかさないし、平凡ゆえに高崎さんとの距離が長らく縮まらなかったと思うと、「うらやましい」を超えて見守りたい気持ちが芽生えます。

 『バトル・ロワイヤル』も理不尽な制度に翻弄される青年たちを扱っていましたが、根島くんの悩みは無理矢理なにかさせられるというようなフィジカルなものではなくて、好きってなんだろうみたいなメンタルの問題で、政府通知というキャッチーな設定を掲げつつも丁寧に恋愛を描こうとするところが素敵でした。


目で追うだけだった片思いの相手、高崎さん

結婚相手を政府が勝手に決めるこの世界のルール

根島くんの政府通知の相手、莉々奈さん。ネジくん贅沢です!

その後高崎さんと莉々奈さんも知り合って、人間関係は複雑化する…