「チェスト!」の叫びとともに、振り下ろされる薩摩の剣
更新日:2011/9/5
薩南示現流 (1)
ハード : PC/iPhone/iPad/WindowsPhone/Android | 発売元 : リイド社 |
ジャンル:コミック | 購入元:eBookJapan |
著者名:津本陽 | 価格:400円 |
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剣豪や戦国大名、幕末英傑などを主題にしてきた歴史小説家・津本陽の原作、とみ新蔵の作画による歴史劇画コミック。とみ新蔵は劇画作家・平田弘史の実弟でもある。
時代は戦国時代末期から江戸幕府創成期。示現流(じげんりゅう)の始祖、東郷重位の若かりし日から晩年まで、剣の道を究め、流派を築くまでの過程が描かれている。
そもそも示現流とは、薩摩に伝わる剣術の流派であり、且つ藩外の者に伝授することを厳しく禁じられていた御留流(おとめりゅう)である。歴史好きの方なら、「チェスト!」と叫び、肩越しに振り下ろす、あの剣術を一度は目にしたことがあると思う。
“示現”とは、観音経の中の示現神通力という言葉からとられたもので、人間の内なる霊現を示すことである。
示現流は一撃必殺剣法のイメージが強く、「槍留め」「碁盤斬り」など剣技が作品中に登場する。が、ただそれだけではなく名前の通り、剣の道には人間の内なる精神も宿ると描かれている。特に弟子の早水吉衛門に剣の道を諭す場面が印象深い。
…剣の道において、相手に勝とうという思考は病である。刀は主君を守るため、侍の誉れを守るため以外には抜いてはならぬ、と東郷重位は教える。後に早水吉衛門は、奥儀「立の太刀」を会得するのである。この下りには、道を究めるのは技だけでなく心構えも必要不可欠と私も考えさせられた。
薩摩隼人に宿る剣。それは桜島のように荘厳であり、また教訓に満ちていたのだった。
東郷重位の合戦初陣。その時から、すでに凄かった
絵から伝わる迫力
見事な正眼の構え
薩摩の象徴桜島
武術の極意は必要最小限。最短最速 (C)とみ新蔵/リイド社