ねじれた愛と鬱屈と自意識と。モノローグで綴る中央線女子物語

更新日:2011/9/6

中央モノローグ線

ハード : PC/iPhone/iPad/Android 発売元 : 竹書房
ジャンル:コミック 購入元:電子貸本Renta!
著者名:小坂俊史 価格:105円

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「街には個性がある」とはよく言われることですが、数ある東京の沿線の中でも「中央線」の個性と存在感たるや、これはもうぶっちぎりと言っていいでしょう。
  
駅ごとにまったく異なるカラー。洗練しきれない泥臭さ、ダサさ。小田急線にも京王線にもない、JR中央線だけが放つ独特のサブカル臭。『中央モノローグ線』はそんな中央線の街々の個性を、実に巧みに4コマに落とし込んだ傑作なのです。

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登場人物は中央線沿いの街に住む8人の女の子(元女子も含)。
  
中野に住むイラストレーターや、高円寺で古着屋をやっている女子、西荻窪の劇団員など。年齢も職業もバラバラな彼女たちの平凡な毎日が、モノローグ形式で淡々と描かれていきます。
  
それはここじゃないどこかへの憧れだったり、街への愛憎半ばする思いだったり、その街に住み続けることへの迷いだったり。
  
かく言う私自身も中央線の魔力に取り憑かれ、吉祥寺在住5年目の身。今や各駅に友達やら馴染みの店やらがあり、どっぷりと中央線カルチャーに浸かっている私から見ても、『中央モノローグ線』のキャラクターや(人柄ならぬ)街柄は、どれも「わかるわかる!」とうなずきすぎて首が痛くなるほど的確。あの沿線のあのエリアだけが放つ、独特の鬱屈と自意識が見事に作品世界に封じ込められています。
  
ラストは中央線在住者でなくとも、自分が住む街に想いを馳せてじんわり泣いてしまうこと請け合い。もはやこの作品は4コマの形をとったモノローグの連なりからなる、青春群像劇といっていいでしょう。
  
後日談ですが、中野在住の「なのか」のその後を知りたい人は、同じ作者の『遠野モノがたり』をどうぞ。あちらは「地方の街と人とのモノローグ4コマ」で、また別の味わいがあって興味深いですよ。

人物紹介その1。中野=なのか、阿佐ヶ谷=麻美といったように、駅名とキャラ名がリンク

人物紹介その2。中学生からシングルマザーまでさまざまな世代の女子が登場

太宰治ゆかりの地、三鷹育ちのミカちゃん。案の定、メガネ文学少女です