先日の著者企業の倒産で再注目! 「反常識」アプローチはビジネスバイブルか、アンチテーゼか

更新日:2011/10/21

千円札は拾うな。

ハード : iPhone 発売元 : Sunmark Publishing
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著者名: 価格:600円

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2011年3月30日、本書の著者である安田佳生氏が代表者を務める「株式会社ワイキューブ」は、東京地裁に民事再生法の適用を申請しました。1990年に創業し、人材・営業コンサルティング事業を展開してきた同社は、安田氏の著書を通じて世の中にその存在を訴求。しかし今、その「反常識」的なアプローチは果たして有効だったのか、というギモンに直面します。
  
ふとけんは2006年2月10日の第2刷の書籍を大切に持っていますが、書店で並ぶ中での異色なタイトルは、当時際立っていました。

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実際、前書きを読むだけで「千円札を拾ってはいけない理由は、「目線が下がり、他のものが見えなくなるから」「成長とは変化すること。変化するとは何かを『捨てる』ことに他ならない」など歯切れのよいテンポとわかりやすいたとえが、「時間」「お金」「いい人材」「本質」という気になる切り口で展開されている、秀逸な一冊であることは間違いありません。
  
しかし、「残業をやめれば給料は増える(なぜなら、アタマを使う時間が増え、考えることで成果が劇的に上がるから)」「優秀な人材には仕事をさせない(なぜなら、たくさん仕事をさせすぎると新しいものを生み出す能力が発揮されなくなるため、自由な時間を与えることが最も効率的な戦略であるから)」など、一見、もっともに思えることが、果たして業績を問われ続ける企業社会の中で、成果を実現し続けて来ることができたのか、という点が最大のポイントだと考えています。
  
著者企業の倒産という現実を踏まえて本書を読むとき、ふとけんが読者の皆さんにお勧めしたい心構えがあります。それは本書で語られている見出しの一本一本が、皆さんの立場や状況からみて、バイブル的に従うものなのか、あるいはアンチテーゼとして捉えるべきものなのか、ということです。
  
何事にも二面性があります。歯切れのよさに飲み込まれることなく、冷静な視点で読み、消化することができれば、実りの多い一冊としてコレクションに加えることができる内容だと、ふとけんは感じています。

本書は全部で4章構成です。章題にはそれぞれ「~時間の常識はゴミ箱へ~」「~お金の常識はゴミ箱へ~」「~人を見る目の常識はゴミ箱へ~」「~常識を捨てる勇気ある決断~」のサブタイトルが付されています。このサブタイトルからも著者の常識に対する挑戦が伺えるのです

1965年生まれの著者・安田氏はふとけんと同世代。在籍年数は違えど同じ会社の出身という共通点もあり、その活躍や著書は個人的に注目していただけに、今回の倒産は正直、残念です。しかし、企業は生き物であり、世の中は常に変化しています。チャレンジし続けていた安田氏のスピリッにトは学ぶべき点がたくさんあり、尊敬する存在だと考えています

本書で注目したいのは、歯切れとテンポのよさ、そして例示のうまさです。まるで講演を聴いているように、言葉がアタマに流れ込んできます。これは投げかけや言い切りに加えて、結論ファースト、事例や会話からの書き出しなど、さまざまなテクニックも駆使されているからです。文章がうまくなりたい! と思う方は、研究対象として読んでみるのもお勧めです

難しい言葉や言いまわしが使われていないのが、本書の特徴のひとつでもありますが、語彙や意味をより深く理解するためには、goo辞書やWikipediaの機能も活用してみましょう。長い文章は辞書検索では出てきにくいです(ふとけん挑戦済み)が、ちょっとした単語を調べられるのも電子書籍の特徴ですから