宵越しの金は持たねぇ「江戸っ子」の暮らしぶりを解き明かすお江戸通の対談集

小説・エッセイ

更新日:2012/3/2

その日ぐらし

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ジャンル:小説・エッセイ 購入元:BookLive!
著者名:杉浦日向子 価格:450円

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いいねぇ、江戸っ子!

同じ庶民なら、この時代の江戸に生まれたかった。この対談を読むと、そう思わずにはいられない。

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「持家なんぞけちくせえ」、「米が切れたら稼ぎにいく」。物に執着しない江戸っ子気質は、火事の多さから生まれたのだとか。出世なんぞクソ食らえで、棟梁だ、親方だ、先生だのは「金魚の刺身」で食えたもんじゃないと敬遠したそうな。金魚の刺身か、ウマイな!

男の8割は独身だったのにも驚いた。だから女性は多少の不器量でもモテモテで、結婚すればカカア天下。洗濯・掃除は請負ババアにお任せで、おかずは物売りから買えばいい。家事なんかほとんどしなくてすんだんだって。財産はなくても、ローンもないから、尻っぱしょりでどこへでも駆け出せる。今こそ、江戸っ子の心意気に見習って、物欲を捨て、一日一日を粋に快活に生きたいもんだ。そう、思わせてくれる一冊だった。

地震で凹んだ心をちょっと軽くしてくれると思うよ。江戸の浮世絵師、歌麿、広重、北斎の人物評論も、通の二人が語ると、とんてもなくリアルでおもしろい。

目次を観るだけでもワクワクしません? たとえば「八つぁん、熊さん、カカアの暮らし」の章を開くと、「“時代劇”など起こらない」「お上のお沙汰も庶民にゃ無縁」「煮炊きも掃除もカカアはしない」「江戸っ子渡世は週休五日」などなど。のんびり平和な江戸の暮らしにトリップしたくなる

江戸は家事が多くて、燃えやすい町だったから、所有欲というものが生まれなかったんだそうな。これからちょっと見習いたい