肩肘張らない聖人たちの休日 『聖☆おにいさん』最新11巻の内容は?

更新日:2015/3/9

聖☆おにいさん(11)

ハード : 発売元 : 講談社
ジャンル: 購入元:KindleStore
著者名:中村光 価格:※ストアでご確認ください

※最新の価格はストアでご確認ください。

 日本人は無宗教というよりは、宗教にかなり寛容なんだなということがよくわかる作品『聖☆おにいさん』です。イエスとブッダが下界ライフを満喫するために、立川でアパートをシェアして生活するというストーリーです。かつて実在した、あるいは有名な著作の登場人物を独自の解釈でマンガのキャラクターにする手法は珍しくありませんが、『聖☆おにいさん』にはこの作品にしかない魅力があります。

 すでに11巻を数え、2013年には劇場版アニメも制作、公開されたことなどからも優れたマンガであることはわかるのですが、本作品に絡んで一番インパクトのあったニュースは、2011年に大英博物館が収蔵、展示していたというものでした。なぜ本作が選ばれたのかという理由については該当するブログなどを閲覧していただければと思いますが、ポイントはユーモアたっぷりに描いているにもかかわらず、1巻の冒頭から最新刊に至るまで、すべての回が宗教ネタでまとめられていることだと思います。

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 イエスは笑いの沸点が低く、ブッダと「パンチとロン毛」というお笑いコンビを勝手に設定したり、ドラマの感想ブロガーをやったりしています。またブッダも手塚治虫を意識して(手塚漫画のブッダを意識して?)漫画を描き、天界のフリーマガジンに連載しているなどの設定はあります。けれどそういったサブルートの話が盛り上がって続いていくようなことはない。ブッダの原稿を取りに来るのは梵天(かつてブッダに教えを説くことを勧めた人)だったりするのです。ちゃんと宗教ネタに戻ってくるわけです。

 途中巻からは、ペトロ、アンデレ、ヨハネや阿難陀など彼らの弟子も、それぞれ癖を持ちつつも原点を忘れない形で登場し盛り上がっていきます。温泉に行ったり、クリスマスを祝ったり。そして11巻ではネットゲームなど最新のエンターテインメント技術も題材にしつつ、やはり宗教ネタに取り込んでいく。その一方で、お盆の回では霊たちの里帰りというイエスに対して、「早く輪廻から出てほしいから、下界に里帰りとかやめてほしい」とブッダは本音をこぼす場面もあり、作者の中村光さんはちゃんと調べて描いていることがわかります。そのような緻密な勉強があるからこそ、宗教を題材にしていても国際的に通用するようなすごいマンガになったのでしょう。


ペトロがこの口調で、スマホで話しているという絵がもうおかしい

最新の立川情報が本当に反映されています…

さらっとですが、六道が図示されています

下界の技術を、心ゆくまで堪能し続ける聖人たちなのです