恋っていいなぁと再認識――19歳のみるめくんと39歳のユリちゃんの切ないラブ・ストーリー

小説・エッセイ

更新日:2012/3/7

人のセックスを笑うな

ハード : PC/iPhone/iPad 発売元 : 河出書房新社
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:電子文庫パブリ
著者名:山崎ナオコーラ 価格:432円

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数年前、邦画をDVDでよく観ていた時期がありました。その時に観た作品の一つが「人のセックスを笑うな」。主演の永作博美さんが、美術の専門学校で講師をする39歳の女性ユリちゃんを演じているのですが、その魅力的なこと。ユリちゃんと19歳のみるめくんのラブ・ストーリーなのですが、ユリちゃんがとにかく愛らしいのです。

普段、映画で観た作品の原作を読むことはほとんどないのですが、原作でもこの魅力に触れてみたくなり、ダウンロードして読んでみました。

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ユリちゃんは、髪はほったらかしでぼさぼさ、化粧も口紅くらいしかつけてなく、汚れたスモックを着てニコニコ笑っているような女性です。授業には遅れてくるし、良い先生というわけではないのだけれど、生徒には人気のあるユリちゃん。そんな彼女に恋をしたのは、まだ将来も決めかねている学生のみるめくん。2人は、ユリちゃんがアトリエとして使っているアパートで、デートを重ねるのです。

ユリちゃんには実は旦那様がいて、そのことはみるめくんも承知しているのですが、2人の関係には、そういった関係にありがちな暗さはまったく感じられません。ユリちゃんの空気のような軽やかな生き方と、みるめくんの若さからなのでしょうか? 2人の会話や互いを気にする様は、なんともかわいらしい恋人同士といった感じなのです。

映画同様、原作も堪能。エンディングは映画の方が私好みでしたが、原作では、みるめくんの恋心をより感じられ、切なくも楽しい作品でした。

尚、本書には、短編「虫歯と優しさ」も収録されています。こちらは、大学の頃から「女性」として生きている23歳の「男性」と恋人(男性)のお話。恋も終盤といった辺りからストーリーは始まります。

2作ともサラッと読めて、ちょっとだけ切ない気分に浸れます。設定はいわゆる普通の恋人同士ではないのですが、恋っていいなぁと思える作品です。

ユリちゃんからの誕生日プレゼントだったマフラーを首に巻き、ユリちゃんのことを想うみるめくん。ユリちゃんと会わなくなって8ヶ月。なんだか、切ないですねぇ

ユリちゃんとみるめくんの年齢差は20歳。「あの、笑ったときにできるシワはかわいかったな。」とみるめくん。愛情たっぷりの表現ですね