夜の東京をバックに加速するバーチャルとリアル。エッジの尖った恋愛小説
更新日:2012/3/7
主人公相良一登(さがらかずと)はマスター・オブ・ゲーム、通称MGと呼ばれる才気溢れるゲーム制作者。その年収は5千万から2億の間を上下しながら、東京港区海岸の自宅兼仕事場で、孤独にゲームソフトを構築してゆくのが彼の日常。
32歳のクールでリッチで孤独な天才が、東京を舞台に女神たちを戦わせる大ヒットゲームソフト「女神都市(ビーナスシティ)」の続編の制作に煮詰まっている頃、コンビニで出会った「人形」。そこから、血の通ったドラマが始まります。
新作のインスピレーションにこのコンビニの少女ヨリを高額で雇い、深夜の東京をバックに彼女のイメージ写真を撮り続ける相良。ファインダー越しに彼女に惹かれて行く様が、スピード感満載に描かれていきます。それが、かっこいいんですねぇ。
汐留、海岸、六本木。渋谷のオフィスに、ル・コルビジェのデッキ・チェア。相良の才能が欲しい大手ゲーム会社の億単位の利益をちらつかせた熱烈な合併コール。ムショ帰りのヨリの彼氏。運命の恋におちてゆく二人を取り巻く世界は、リアルな東京のような、バーチャルなゲームの世界のような、微妙なバランスです。
まったくもって個人的な話で申し訳ないのですが、ワンブロックも行けば羊や牛がわんさかいるところに暮らすものには、東京のラブストーリーはすべてがキラキラとまばゆい。実際のゲームオタクな読者にもぐぐっとくるリアルなゲームソフト制作現場の描写に大満足できるでしょう。
ヨリのキャラクターも綿密ながらわかりやすい。男性読者なら相良と一緒に恋におちる可能性大。
深夜のコンビニって、何かが変わる「きっかけ」の宝庫な感じ
億を稼ぐ男の出会いは、やおら偉そうです。それが運命の女神になるとも知らず…
美容学校を目指してコンビニのバイトをしているヨリには不思議な力が
男心をくすぐる、この無邪気度
160㎝にも満たない痩身のヨリの背中のタトゥ。大小の演出満載で「カッコイイ」感も盛り上がります