若者たちがイスラム国を目指す理由は、「就職難」と「心の空白」?

公開日:2015/4/18

イスラム国の正体

ハード : 発売元 : 朝日新聞出版
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著者名:国枝昌樹 価格:※ストアでご確認ください

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 毎日のようにその動向が報じられているイスラム国。とくに今年の1月から2月、日本人の拉致・殺害という「事実」を突きつけられ、いやおうなくその存在に多くの関心が集まりました。本書は、「気になる国」イスラム国の知りたいことをわかりやすく解説。また、なぜ多くの若者たちがイスラム国をめざすのか、その理由も探っています(著者はシリア大使などを歴任した元外交官)。

 国が成立する要件は、権力、国民、国境があることといいます。本書を手掛かりに、イスラム国のそれを見てみると‥。イスラム国が掲げる理念は、「正統カリフ時代」(ムハマンド死後の632年~661年)のイスラム社会を理想の世とし、コーランの教えを字義どおり実行することにあります。最高権力者はアブ・バクル・アブダディ(予言者ムハマンドの代理人「カリフ」と呼ばれている)、幹部はアブダディを含め12人。そのなかには、フセイン政権時代の旧イラク軍の将校が含まれています。首都はラッカ。占領地域の「国民」はおよそ600万人。人々の暮らしはシャリーア(イスラム教徒の行動規範。生活の基本を律するイスラム法)に従い、休日は木・金曜日、たばこ、水キセルは禁止。音楽を聴くことも禁止といいます。

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 国境についてイスラム国は、1916年、イギリスの主導で決められた、オスマントルコ帝国をイラク、シリア、レバノン、ヨルダンに分割した「サイクス・ピコ協定」の廃止を主張し、かつてイスラム勢力が支配したアジア中央部からイベリア半島までを領土とすると宣言しています。現状では国境は不確定です。国境の有無が国として成立する要件であれば、イスラム国は国とは呼べないことになります。国でないとすれば、その「正体」はなんでしょうか。

 アラブと周辺諸国には、7世紀のカリフ時代に郷愁をもち、理想化する傾向があり、その復活を主張するイスラム国に共感する空気があるといいます。さらに先述の欧州主導の「ピコ協定」への反感もあると付言しています。現在、アメリカ、イギリスなどの支援を受けたイラク政府軍のイスラム国掃討作戦がはじまっています。アメリカのイラク侵攻によるフセイン政権崩壊(2003年)後や「アラブの春」(はじまりは2010年12月チュニジアの「ジャスミン革命」)以降のアラブ各国での政治的混乱をふまえ、著者は次のように記しています。

アラブ世界にはいま「民主主義国家」というものは、どこにもないのです。(中略)アラブ世界の問題の本質は、黒か白かの二元論では理解できません。二元論で解決策を求めようとすることは危険ですらあります。アラブ世界の現実と向き合い、解決の糸口を模索することしかありません。(中略)イスラム国はそんな混乱の時代が生んだひとつの極端な現象なのでしょう。いずれは消えていくことでしょう。ただし、思想・信念という「こころ」は生き続けます

 イスラム国には、世界中から多くの若者たちが参加しています。本書では一章(第4章)をもうけ、その理由を 探っています。戦闘員3万人~3万5千人。うち1万5千人以上が外国人(日本人 の有無は不明)とされ、その国籍は80ヵ国以上。年齢層(ヨーロッパ出身)は10代が一番多いといいます。国籍で最多はチュニジアで、その 理由として、若者たちの就職難といった社会不安や「ジャスミン革命」後の「心の空白」(単純な正義の希求や徒労感)をあげています。多くの若 者たちをひきつけ、地下鉄サリン事件(1995年)など起こしたオウム真 理教にも言及しています。地下鉄サリン事件から20年、その「こころ」はいまもどこかに生きて いるかも しれません。


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