幽霊は私の姉妹だった。幻想的で残酷な『わがままちえちゃん』

更新日:2015/4/22

わがままちえちゃん

ハード : 発売元 : KADOKAWA / エンターブレイン
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著者名:志村貴子 価格:※ストアでご確認ください

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 ある雨の日、青蘭中学の入学式を待ちわびる「塙さほ」は、傘もささずに青蘭の制服を着て立っている少女と出会います。「あたしがみえるの?」と語りかけてきたその少女は、みつあみで、幽霊で、名前は「ちえ」。それを聞いた両親は、その子は、「さほ」の亡くなったお姉さんだといいます。けれど、母のお腹の中で死んだはずの自分が、なぜ成長して、青蘭の制服を着ているのか? 疑問に思った「ちえ」が、あることに気がついたそのとき…。「ちえ」と「さほ」、ある姉妹が遭遇した不思議なものがたり。その真実とは?

 どこか懐かしさを感じさせる優しいタッチながらも、幽霊と人間の意志が交錯する謎に包まれた物語に引き込まれて思わず背筋がヒヤっとする場面も登場するこの物語。姉妹が互いに相手のことをどう思っているのか徐々に解き明かされていくストーリーにはせつなさを感じます。

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 美しい姉妹に隠された過去の傷やその2人を取り巻く人間模様。学校と家庭が舞台で、主人公は平然と幽霊を受け入れともに部屋で過ごすなど、現実的なベースのなかに白昼夢のような要素が紛れ込み、その絶妙なバランスが読者を惹きつけます。ときおり紛れ込む生々しい感情の描写が、まるでいけないおとぎ話を読んでいるようです。

 タイトルに含まれた“わがまま”とは一体何を指しているのか? 幻想的で不思議な世界に思わず舞い込んでしまようなこの一冊を手に取って、ふわりと描かれる姉妹の美少女ぶりをぜひ堪能してください。


後ろの子は皆には見えません

雨の日に出会った姉妹

幽霊だけど仲良く登校

徐々に明かされていく2人の秘密