大切な人の死を、何の飾り気もなく真正面から描いた温かい涙が溢れる1冊
更新日:2012/3/7
「この物語が悲しいということで泣くよりも、この物語を読んで、死んでしまった自分の大切な人たちのことを思い出して泣いてしまう。重松先生はズルイ。」
と、昔この本を読んでいた友達が言っていたのを、読みながら泣きながら思い出しました。
普段の私たちの生活の中ではあまり意識しない、けれども確実に私たちの日常に存在する“死”というもの。それを、この小説では、小説にありがちな特別なドラマ性などは持たせず、私たちの日常の延長線上にある当たり前の事として、真正面から率直に描いているように感じました。そして、だからこそ私も、そして「重松先生はズルイ」と言った友達も、この小説を読んで、私達が過ごしてきた普段の日常の中で突然に死んでしまった大切な人たちのことを、ありありと思い出しては泣いてしまうんだと思います。
大切な人が死ぬということ。
それはきっと、誰もが今までも、そしてこれからも経験していくことです。ただ、大切な人が死んでしまってそれが全ての終わりではない。大切な人が死んで、その後で残された人たちがどうやって歩みだすか、どんな風に生きていくかが本当に大切なことなんだと、この本を読んで強く思いました。
温かい涙があふれる1冊です。
余命幾許もない妻との物語を描いた「その日の前に」
自分が死ぬことの恐怖で夜中に身震いする妻、和美
「最後の最後まで、ママは直るんだって信じてる顔を見せてほしい」といい、子どもに自分の余命を伝えないと決めた和美
王様のブランチで「BOOK大賞」を受賞したそうです