誰がなんと言おうとこの愛を貫くんだという想いこそ幸せ、ということ

小説・エッセイ

更新日:2012/3/2

どれくらいの愛情

ハード : PC/iPhone/iPad 発売元 : 文藝春秋
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:電子文庫パブリ
著者名:白石一文 価格:540円

※最新の価格はストアでご確認ください。

人を愛するという事とは一体どういうことなのか。

直木賞作家白石一文が描く純愛短編集です。

advertisement

『20年後の私へ』の主人公はバツイチで、好条件の男性に結婚を申し込まれながらもそれを断ってしまいます。なぜなら条件云々ではなくて、自分は彼を本当に心から愛することができないと思ってしまうから。

この短編集の主人公たちは、それぞれが愛する人に裏切られたことがあるにもかかわらず、誰かに愛されることよりも、自分から人を愛することを選ぶ人々ばかり。目に見えず形のない「愛」というものだからこそ、自分の想いを信じ、貫くことを決意します。

私の友達にも「なんであんな男と付き合ってるの?」という子が何人かいるけれど、彼女たちが結局言うことは「好きだから仕方ないんだ」ということ。

そう、人は好きになってしまったら周りからなんと言われようとどうすることもできないし、自分の好きという気持ちを信じたいんだと思います。それが傍から見てどんなに不幸に見えようとも、貫いている間はきっとみんな本当に心から幸せなんだな。

「一度だけのかけがえのない自らの人生をいかに心豊かに、愛情深く生きるかということのみが重要なのだ」と本文の中で出てきますが、まさにそのとおりですね。誰かに愛されることも大切だけれど、誰かを愛することの喜びの方が、もっともっと大きいんです。

自分の中の人を愛する気持ちについて何かしらの疑問を持っている方にぜひ読んでほしい作品でした。誰かに愛されることを待つよりも、まずは心から愛せる人を探そう(そんな事ばかり言ってたら婚期を逃しそうだけど…)。

表題作の『どれくらいの愛情』はドラマチックでちょっと泣けます。

4つの短編集から成る1冊です

「心から愛せるのだろうか」と自問してしまうシーン。こんな風に自分の気持ちに素直に生きたいけど、現実はなかなか難しいかも…