「アニマルプラネット」の剛腕“猫ヘルパー”のトンデモ半生に学ぶ、猫と仲良くなる方法

更新日:2015/6/21

ぼくが猫の行動専門家になれた理由

ハード : 発売元 : パンローリング株式会社
ジャンル: 購入元:Amazon
著者名:ジャクソン・ギャラクシー 価格:1,100円

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 タトゥにピアス、スキンヘッドにヒゲの大男が、猫の問題行動をズバリ解決! 世界180以上の国・地域で放送されている「アニマルプラネット」の番組『猫ヘルパー~猫のしつけ教えます~(My Cat from Hell)』が、猫飼いの間で話題になっている。

 猫は犬とは違い、しつけができないと言われる。しかし、この“猫ヘルパー”ことジャクソン・ギャラクシー氏にかかれば、長年飼い主に牙をむいていた猫はゴロゴロ喉を鳴らし、壁やベッドにおしっこをまき散らしていた猫は大人しくトイレで用を足すようになるのだ。

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 じつは、私(こばぴす)も猫専門のペットシッターでもある。さっそくこの本の「マジカルアドバイス」から、眼鏡のつるの匂いを嗅がせて猫と仲良くなる作戦を敢行。何年もこたつから頭をのぞかせるだけだった猫がソロリと出て来て、お腹を見せてコロリン! ゴロゴロ甘えてもらうことに成功した。

 とはいえ、この本はしつけのハウツー本ではない。ジャクソン氏のトンでもない半生が綴られた本だ。

 かつて、彼は薬物依存症だった。窓もない倉庫で自分の頭の中でしゃべり続ける幻聴と戦いながら、何とか稼ぎを得ようとデタラメの経歴を並べ、動物保護施設のスタッフになることに成功する。そこで目にしたのは、人間の身勝手な理由で安楽死させざるを得ない動物たち。

 いきあたりばったり、辛い場面には目をそらしてきた彼にも安楽死担当はまわってくる。安楽死を避けるには、里親(貰い手)を探さなければならない。犬は訓練次第で人間になつく可能性があるが、猫はそうはいかなかった。動物についての知識など皆無だったジャクソン氏は苦しみながら、曇りのない観察眼で、ある傾向を見つける。

「ニンゲンに向けた一瞬の動きが、“私の猫”か“私とは合わない猫”かを決定するサインとなることを発見したのだ。一瞬の視線、ケージの前のほうへと踏み出す足、柵の間からこちらに向かって伸ばす前足などなど」

 猫の行動に関する本をむさぼるように読んだ彼は、ケージの奥に丸まって人間に懐かず、安楽死リストに入れられた猫にクリッカートレーニング(望ましい行動を取った時、音を出しご褒美を与えることで、その行動を引き出す訓練)を行い、柵の前で人間にハイタッチをするようなしぐさをさせ、里親希望者の目をひくことに成功する。

 強迫神経症や依存体質など、彼自身の問題の裏にあった繊細な心が猫たちを救った!…とハッピーエンドでまとめたいところだが、物語はそう簡単に終わらない。
 抜け出せない薬物依存、過食症との新たな戦いなどジャクソン氏の問題行動も、教科書通りには解決しない猫たちの問題行動も、どこまでも一筋縄にはいかず、どちらも壮絶だ。

 その壮絶なエピソードと共に、先に述べたような「マジカルアドバイス」として猫のしつけポイントが実践的にまとめてあるのもこの本の嬉しいところ。

 人間の思い通りになんかならない繊細で誉れ高き動物に、人生崖っぷちのアツい男が完全な捨て身で取り組んだからこそ、猫たちの行動に、その気持ちに、応えることができた。

 じつは、先に述べた眼鏡のつるの作戦は、猫好きにとってオーソドックスなもの。私の勝因は作戦自体より、読後、いつの間にかジャクソン氏に倣い、改めて相手をよく見て実行したことだろう。私も日本の“猫ヘルパー”となるべく、今後も彼のようにありたい。ただし、ルックスと問題行動は遠慮しておくが。


誰でも猫と仲良くなれるマジカルアドバイス「猫ちゃん、愛しているよ」

さらに仲良くなるために眼鏡のつるでご挨拶。ひっかかれないように気をつけて実践してみよう!

ジャクソン氏にたくさんのことを教えてくれた愛猫ベニー

ベニーは「絶対になつかない」と言われた問題行動のデパート猫だった

別れのとき。その決断には深く考えさせられ、涙なしでは読めません