初見の小説『ほかならぬ人へ』を電子書籍で読む
更新日:2012/3/5
昨年末、恒例行事(?)で1年間の消費活動を振り返っておりましたところ、そういえば私は「初見の小説を電子書籍で読む」ということをしたことがないなと気がつきました。
私はふだん、iPhoneで電子書籍を読んでいるのですが、そのほとんどが、紙の書籍で部分または全部を読んだことがあるものを、携帯したくて、もしくは再読したくて電子書籍として購入し直したものでした。電子書籍で初見という書籍は、iPhoneアプリとして“出版”された書籍か新書ものだけでした。
そこで、本年最初のチャレンジ、「初見の小説を電子書籍で読む」をやってみました!
電子文庫パプリで読んだことのない小説を探していたら『ほかならぬ人へ』を発見しました。もうすぐ今年の芥川賞&直木賞が発表になるなあなんて思いつつ。本作は第142回直木賞受賞作品です。
iPhoneにダウンロードしてページを繰って、まず目にした目次のこれ以上ないシンプルさにドキンとしました。お話は目次から始まっている…! そして文字びっちりのページ群。比較的短い文章や細かい段落分けがされている新書ではあまりお目にかからない光景です。ページ送りで読んでも、行送りで読んでも、次から次へと文字が湧いてくる感じが、紙の書籍でページをめくったときとはまた違った“続いている”感がありました。
さて『ほかならぬ人へ』ですが、中編2篇「ほかならぬ人へ」「かけがえのない人へ」が納められており、どちらも男と女と、その愛についてのお話です。愛についてのお話ですが、ロマンチックな台詞や描写がほとんどなく、「ぽわわ?ん?」よりはむしろ「…ええええ?!」「…なななな!!」という叙情を抱いて物語は進みます。
少々ネタバレになってしまうかもしれませんが、2篇ともハッピーエンドではありません。もし私が20代の娘っこであったのなら、この小説は「おもしろくない(not つまらない)」と評していたかと思います。しかしアラフォーの今のワタクシには、ハッピーエンドではないけれど「腑に落ちる」物語だったな、と思いました。主人公や登場人物に年齢が近いから、というだけでは、なく。
ちょっと通勤電車で読むにはちょっと不向きな小説かもしれませんが、それをコソーリと読むのも“手のひら読書”の醍醐味かと。そして顔を上げ、ドアの脇にもたれかかっているあの人も誰かの「ほかならぬ人」かもしれない、新聞を小さく折り畳んで読んでいるあの人も誰かの「かけがえのない人」かもしれない…と思ったりするのでした。
ザ・小説の目次!
ページいっぱいに並んだ文字。物語の進行と相まって、ゲシュタルト崩壊してきそうになったこと数回…