離れ離れになっていた母が残したものは、古い洋館と怪しいサイトだった…松村比呂美『終わらせ人』

小説・エッセイ

公開日:2011/11/13

終わらせ人

ハード : PC/iPhone/iPad/Android 発売元 : KADOKAWA / 角川書店
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:BOOK☆WALKER
著者名:松村比呂美 価格:609円

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■終わらせ人/松村比呂美/角川書店

フリーライターの祈子あてに、監察医務院から電話がかかる。それは、生まれてすぐ離れ離れになった母の死を知らせるものだった。そして祈子は、母が住んでいたという洋館を相続することになる。洋館内にはひとつだけ鍵のかかった部屋があり、その部屋のパソコンの電源を入れると「終わらせ人の館」というサイトが立ち上がった…。

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主人公の祈子は「終わらせ人」という、一子相伝の役目を背負っています。とても奇妙で不思議な能力なんですが、読み進めていくうちに、本当にこういう能力を持った人がいてもおかしくないかもしれないなぁ…という気分になってきました。なんとも不思議な魅力を持った作品です。

第三章に出てくる愛情の貯金の話が、とても印象に残りました。自分自身が親から愛された経験がなくても、大人になってから愛する相手と出会って愛情を注ぐことができれば、ちゃんと愛情の貯金をすることができる…。この話がものすごく心に染みました。親子間だけに限らず恋人同士の間でもいえることだと思うんですけど、愛されることを望む前に、まずは自分から愛することをしなくちゃダメなんですよね…。この作品を読んで、過去の自分を反省しました。愛されることばかりを望んで、自分から愛することを怠っていたなぁ…と思うことが多々あったので。

主人公の祈子は生まれてすぐに父方の祖母に預けられたので、自分は母親の愛情を知らずに育ったと思っていたんですけど、実際にはそんなことはなかったんですよね…。ラストのお母さんからの手紙、ジーンときました。離れて暮らすからこそ、それが子供の為になることもあるんですよね…。最終的にお母さんの愛に気づくことができて、本当に良かったと思います。


目次です

確かに見るからに怪しいタイトルですよね(笑)

文字の大きさを変えられるのも電子書籍の魅力の1つです。小さくするとこんな感じです