1000年後にも残したい、あなたの青春小説はなんですか?

1000年後に生き残るための青春小​説講座

ハード : 発売元 : 講談社
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 1000年後にも生き残っていたいけれど、それはどう考えても無理な話。それでは、その思いを青春小説に託したら…。時の流れに負けず、長く生き残る青春小説とは、どのような作品でしょうか。

 本書は、1作品1講座の計5講座という講座形式で本を紹介する。取り上げられている作品は、野間宏『暗い絵』、武田泰淳『蝮のすえ』、椎名麟三『深夜の酒宴』、太宰治『十二月八日』、J.D.サリンジャー『ライ麦畑でつかまえて』の5作品。これらは青春小説ベスト5でも、すべてが「残る」青春小説でもありません。ただ共通点があります。いずれも「戦後文学」であることです。「戦後文学」とは、「戦争と青春を経験した人間」が「戦争と青春を混ぜてつくった青春小説」。そして「青春小説」とは、「若者たちから支持される。その一点」です。

 各講座では、これらの作品を読みながら、本書のテーマ、どうすれば時の流れを超えて、1000年後にも読まれるかを検討します。合わせて、アメリカ同時多発テロや3.11東日本大震災、福島原発事故などを例に、時代とどうかかわるべきか、またネットや電子書籍などの話題をまじえて講座は進みます。このような点に紙面が割かれているのは、時代とどのようにかかわるか、そのかかわり方に「戦後文学」の特徴や、「残る」小説のポイントがあるからです。これらについての著者の語り口は、時代にのめり込みすぎず、近づきすぎず離れすぎず、八方美人でも依怙地でもなく、また日和見でも居直るでもなく、決して力まず、深刻がらず、押し付けず、ときにシニカルでユーモア…。ひとことでいえば、時代との微妙な距離感ということでしょうか。

 その距離感は、「残る」作品として取り上げられている太宰治の『十二月八日』という作品での時代へのかかわり方に符合しているように見えます。太宰治は『十二月八日』を当時のさまざまな事情を考えに考え、時代とかかわらないように、かかわっている時代を書いたのです。時代との微妙な距離感。太宰治についての著者の筆致は、紙背に徹し共感に満ちています。「残る」小説のヒントがそこにあるのですから、当然かもしれません。

「残る」作品があれば「残らない」作品があります。野間宏、武田泰淳、椎名麟三の3作品は後者の例です。なぜ残らないのか。その理由は本講座に譲りますが、戦後70年を期に「戦後文学」が復活するかもしれません。ひとつ付言しますと、太宰治の愛読者であった武田泰淳は、太宰治の作品には「からっと空が見えるというところがあった」と評しています。本講座を通じて1000年後にも残ってほしい、あなたの青春小説を選んではみてはいかがですか。


目次から

「戦後文学」の一例として取り上げられている武田泰淳『蝮のすえ』の冒頭部分

今日でも多くの読者をもつ太宰治。『十二月八日』の特徴は、時代との微妙な距離感



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