史上初の女性皇太子誕生。その背景とは…

公開日:2011/11/29

女帝の手記 (1) まほろば 光明皇后

ハード : PC/iPhone/iPad/WindowsPhone/Android 発売元 : 里中プロダクション
ジャンル:コミック 購入元:eBookJapan
著者名:里中満智子 価格:324円

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歴史大作を幾多も作ってきたマンガ家、里中満智子の作品。
舞台は奈良時代。主人公は阿倍内親王。阿倍内親王の父は聖武天皇、母は光明皇后。歴史的に阿倍内親王は立太子し、史上唯一の女性皇太子となり、その後に孝謙天皇、重祚して称徳天皇になった女帝である。作品は、その彼女が9歳の時から綴る手記風の形となっている。

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孝謙天皇の前にも女性の天皇が存在していないわけではない。だが、どの場合も後継者である皇太子が幼いため、当人が即位するまで見守る形、または天皇が亡くなられるか、退位してから任命されていた。最初から次の天皇になるべくして、立太子した女性は阿倍内親王が実は初めてだったのである。

なぜ阿倍内親王は初めての形となったのか。それは政治的背景によるものである。

阿倍内親王の祖父は藤原不比等。時は藤原家全盛の時代。藤原一族は権力を維持するために、血筋の者を天皇に即位させなければならなかった。そして、流行る疫病のため、一族の男子は病に倒れ、阿倍内親王に白羽の矢が立ったのである。

一方、阿倍内親王は幼少の頃から、女子ゆえに天皇にはなれないと周囲からがっかりした目で見られてきた。女性皇太子となったことで、生まれてはじめて、女であることに負い目を感じず、生きていける喜びを感じたのである。そして、藤原家の栄光と誇りを汚さないため天皇に値する人間になろうと、女であることを捨て、政治、勉学に励む。だがそんな彼女は20歳にもならぬ歳で政争に巻き込まれていくのだった。

父聖武天皇と県犬養広刀自との間に生まれた男子安積親王への嫉妬と確執。母光明皇后と僧玄昉との不義密通への嫌悪感。長屋王の変、橘奈良麻呂の変、藤原仲麻呂の乱などの政変。波乱の時代、彼女は独身を通しながら、駆け抜け、孝謙天皇となってからも、重祚して称徳天皇になってまでも、天皇の威厳を守り通したのである。

本作は読者を古代日本へ、日本に殉じた女性の生き様を教えてくれるであろう。

「ひめみこさま」と呼ばれる阿倍内親王。9歳

初期の舞台の平城京

藤原家の家系図

弟の基王が早世した時、取り乱した父を見て、阿倍内親王は憂う

憂う阿倍内親王が思い出した言葉とは「覚悟」だった

そして芽生える藤原一族としての自覚 (C)Machiko Satonaka