機械が意識を持って人間の父と母を探す旅にでる奇跡の物語

公開日:2011/12/9

わたしは真悟 (1)

ハード : PC/iPhone/iPad/Android 発売元 : 小学館
ジャンル:コミック 購入元:eBookJapan
著者名:楳図かずお 価格:432円

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「わたしは真悟」は凄い傑作です。
楳図かずおはホラー漫画の世界でも大傑作を出したし(わたしが大好きなのは「神の左手 悪魔の右手」だ)、コミカル漫画の世界でもとんでもない傑作を生み出してしまった(もちろん「まことちゃん」を筆頭に)けれど、ファンタジー漫画での恐るべき傑作がこの「わたしは真悟」だと思っています。全編が唸りを上げている名作なのです。

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小学生さとるのお父さんは、豊工業という工場で産業ロボットが機械の部品を組み立てるのを監視する仕事に就きました。お父さんがサボって喫茶店に行く時、さとるはかわりに機械を見張りながら少しずつプログラムを組んで、機械に自分の顔を覚えさせたり簡単な質問に答えられるようにしたりしていところ、ある日機械は意識を持ったのです。「ワタシハ、シンゴ」。それはさとるとガールフレンドのまりんの名前から一文字ずつとって機械が自分で自分に名付けた名前でした。

このあと機械の真悟は、東北とイギリスに遠く別れ別れになった父と母、つまりさとるとまりんに会うため、そしてお互いのメッセージ届けるため、台座から自分を切り離し、はるばる海を渡り、世界中のコンピュータとつながり、もう一度日本へ、今度は少しずつ壊れながら戻ってくるのです。

そうです、プロットとしては「アルジャーノンに花束を」ですね。意識の芽生えからやがて高度な知能の持ち主となり、それが一転言葉も満足に使えない元の地点へと次第に落ちていく。ラストにかけて泣けて泣けてしょうがないのも同じです。ただ、主人公が機械だというところに独特の情緒もあるのです。それは「けなげさ」と「純潔」です。人間の主人公だったらもう信用できないそうしたあり方に、真悟はすくっと立っています。

機械が意識を持ち、自分を機械だと知ってしまった時のあらかじめ失われた哀しみって、どんなものかしらとついつい想像しながら読んでしまいました。「わたしが初めて~した時、~だったといいます」というスタイルの真悟のモノローグで物語が進むのも、絶妙な叙情とはかなさがあります。

面白い!

主人公は小学六年生のさとる

まだ意識を持つ前の真悟。ただの産業用ロボットだ

ある日さとるは、運命の美少女まりんに出会う

真悟のスキャンする世界に、突如見たこともないパターンがあらわれる。世界の認識への第一歩だった

さとるは真悟にさまざまなデータをインプットしていく

一方、さとるとマリンの間にはラブストーリーが展開していく (C)楳図かずお/小学館