若者よ、野生の美を忘れてはいないか。なぜ自分なのかと心の折れそうな君へ

公開日:2011/12/11

C.W.ニコルの野性記

ハード : PC/iPhone/iPad/Android 発売元 : 講談社
ジャンル:教養・人文・歴史 購入元:eBookJapan
著者名:C.W.ニコル 価格:432円

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ナチュラリストであるC.W.ニコルが冒険や生き方について語りつくしたエッセイ。

著者は幼少の頃から、2つの夢を持っていた。ひとつは北極探検家になること。そしてもうひとつは日本へ赴き、武道を修め、黒帯をとること。著者は2つとも成しえている。周囲は運が良かっただけと言うが、達成できた理由は生き方だと著者は説く。

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著者は語る。ウェット・ブランケットと呼ばれるような人種、何にでもケチをつけて、座を白けさせる人間にはなってはならないと。何に対しても皮肉で否定的な見方ばかりしている彼らのような人間は、自分たちだけでなく周囲の人たちの情熱の炎までも水をかけ、消してしまうのだ。だが否定されても、自分の考えを曲げないこと。自分と他人との間に溝があることを忘れてはならないと著者は言う。

彼は常に馬を飼える大人になりたいと考えていた。スペイン語で「紳士」という言葉は、「馬に乗る人」という意味である。土地の広さや財産といった問題ではなく、精神的に馬を飼うということができないとすれば、本当の意味でその人は紳士の要素が欠けているのである。著者が紳士になれたかどうかは読者の判断に委ねよう。

そして食べ物、人との交流こそが冒険だと著者は語る。
イヌイットとともに暮らし、旅をし、猟をし、初めて「ムクトゥク」を食した思い出。イヌイットが二頭のベルーガ(白イルカ)を仕留め、著者のもとへ引いてくる。まずブラバー(脂皮)と肉の部分が切り取られ、人々はすぐに口に入れて、噛み始めた。コリコリした白い脂皮がムクトゥクである。イカかアワビのような食感で、本で読んでいたよりもずっと美味しかったそうだ。ビタミンに富み、厳寒下の人体にとって、この脂肪はきわめて貴重なのである。どんな食べ物にも、その中身には何代も続く当地の人間の物語が詰まっている。著者はその体で体験したのである。

エッセイ集を読めば、その著者が何を感じ、何を考えているのかが小説よりずっと冷静に、ずっと大胆に、洞察できる。本書でC.W.ニコルという人間を読者もより知ることができるだろう。

著者が一番伝えたい言葉

著者の幼少の頃の想い

盟友植村直己への想い

フィールドワークについて語る

ドキュメンタリー番組への批判 (C)C.W.Nicol 1988/KODANSHA