数奇な生涯をたどったAV女優にしてテレビタレントの赤裸々な告白

小説・エッセイ

公開日:2011/12/13

PLATONIC SEX

ハード : PC/iPhone/Android 発売元 : 小学館
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:BookLive!
著者名:飯島愛 価格:508円

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いうまでもなく今は亡きタレント飯島愛の告白体験記、大ベストセラーになった1冊だ。家庭での不和から社会への違和感、そこから逃避するように裏の道へ走っていったさまが赤裸に描かれて切実である。なにもかもぶちまけるように書き込まれているのがむしろ痛々しくすらある。それは若さの痛さだ。

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だが、逆にいうとこうも読める。彼女が落ちていった先にあったものとは、セックスとクスリと万引きなどのチンケな犯罪、レイプや暴力、不良と呼ばれる人たちの間であたりまえに見られる陳腐な風景でしかない。取り立ててそこに何かの世界があったわけではないだろう。それはいわばもう一つのだらけた日常だ。欲望の解き放し放題が自由と見えただけで。彼女が中学生だったという年齢の低さが刺激的だっただけで。

にもかかわらず、この本には妙なリアル感がある。というか妙なリアル感だけが読む人の心を動かしたのだといって間違いない。そのリアル感はおそらく、全部を彼女が自分でちゃんと書いている、そのことからやってきていると思われる。確かにうまく書けていてそのことにも感心させられるが、はしばしに当事者でなければ感じられないようなフレーズが出現して胸をつかれるのだ。

彼女が一時期壊れた生活をしていたから私たちが気持ちを動かされるのではない。彼女のような生活を経験した女性は多分を私たちの想像するよりずっと多い。その生活を飯島愛だけが見事に言語化したから私たちはなにか確かなものの手ざわりを本書にもつのだ。

ただ、すこうしだけ、飯島愛の呼吸の端に説教くさい風が感じられるような気がして、わたしはそこが落ち着かなかった。