宇宙での過酷な戦いをリアルに描いた、SF小説の名作を電子書籍で

小説・エッセイ

公開日:2011/12/20

航空宇宙軍史 - 巡洋艦サラマンダー

ハード : PC/iPhone/iPad 発売元 : 中央公論新社
ジャンル: 購入元:電子文庫パブリ
著者名:谷甲州 価格:486円

※最新の価格はストアでご確認ください。

十ウン年前、俺が高校生だったころ夢中になって読んだSF小説『航空宇宙軍史』シリーズが、電子書籍化されていたので思わず購入。友人たちに「とにかく読め! すぐ読め!」と布教しまくって引かれたのも、今となってはいい思い出…でもないか。まあ、痛い思い出話はおいといて、とにかくレビューを始めよう。

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物語の背景となるのは、およそ100年後の太陽系で起こる「外惑星動乱」。地球に対して反旗を翻した木星・土星の衛星群による連合「外惑星連合」と、地球側「航空宇宙軍」との戦いだ。

タイトルにもなっている「サラマンダー」とは、外惑星連合軍側の巡洋艦の名前。航空宇宙軍に比べ、戦力で圧倒的に劣る外惑星連合がようやく建造した正規巡洋艦だ。が、このサラマンダーが完成し、実戦に投入された時には時すでに遅く、外惑星連合は敗色濃厚。サラマンダー自体も、機関の不調と推進剤不足で進退窮まってしまう。本書にはこのサラマンダーの戦いを描いた2本を始め、外惑星動乱末期の戦いを描いた短編が計4本収録されている。

で、話は冒頭に戻るが、この作品のどこがボンクラ高校生(=俺)を夢中にさせたのかといえば、このシリーズの特徴である圧倒的にリアルな宇宙戦の描写だ。視界内の敵にミサイルやレーザーをぶっぱなす派手な戦闘ではなく、相手の軌道や自艦の推進剤の残量といった様々な要素をひたすら計算した上で、数日、数週間かけて会敵する。かなり地味だが、ギリギリの緊張感が漂う戦闘シーン。そして、常に冷静でプロ根性の塊のような乗員たち。これがたまらなかったわけだ。いいオッサンになった今読み返してみても、やっぱりこのあたりのカッコよさは薄れていない。

未読の人はとにかく一度読んでみてほしい。っていうか、とにかく読め! すぐ読め!

作中の日時には、惑星がどの位置にあるのか。こういうところまできっちり設定されている

外惑星連合軍の期待を背負って建造されたサラマンダーだが…

テストも不十分なまま出港したサラマンダーはあちこちにトラブルを抱えている

小さいけど、ちゃんとイラストも入っているのだ

相手の動きやデータから、意図を読みあい、裏をかきあう。命を賭けたギリギリの駆け引き