中国に“見放されたら”日本の食糧事情は立ち行かなくなる!?

公開日:2012/1/14

中国食品工場の秘密

ハード : PC/iPhone/iPad 発売元 : 小学館
ジャンル: 購入元:電子文庫パブリ
著者名:青沼陽一郎 価格:507円

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「中国食品工場の秘密」というタイトル、そして、2008年に中国の毒餃子事件の数ヶ月後に刊行されたということから、中国の食品工場の実態を暴露し、消費者の危機感をあおる本かと想像して読み始めたのですが、読後は違った意味での危機感を持つこととなりました。

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著者の青沼陽一郎さんは中国の食品の危険性がにわかにマスコミで話題になる数年前から、日本を取り巻く食糧事情について取材を重ねてきた人物です。そんな著者が本書ではまず、“私”の視点で中国の食品工場の現場をリポートします。“私”の視点=「食べ物を提供していただく、というよりは、安全な食べ物を食わせろ! と主張して止まない日本の“消費者様”の立場」と著者は語っていますが、この本を読んでいると、日本の食卓のために、どれだけ多くの中国の人々が日夜、さまざまな作業に従事しているのかということが分かり、頭が下がる思いです。

まず、中国のだだっ広い土地に大きな工場がいくつも作られ、徹底した衛生管理、品質管理の下、中国の若者(女性が多いそうです)が流れ作業に従事する様子が紹介されます。そして、我々が普段、頻繁に口にする加工食品がどのような工程を経て作られているのかが、明らかにされるのです。サバ、カレイの切り身、エビフライ、かき揚げとおなじみの食品は、どれも日本人の高い要求に応えられるよう、気の遠くなるような手作業も交え、何工程も経ているのです。例えば、エビフライ。日本人は尻尾にこだわるそう。殻剥きをする時でも尻尾はきれいに残し、パン粉をまぶす衣付けの作業でも、尻尾にパン粉をつけてはいけないのです。そして、日本向けの食品を作っている工場では、安全、安心を叫ぶ日本人のために、なんと、パン粉にするパンまで工場内で作っているところも多いというから、驚きです。

量も形も均一なタコ焼きを作る作業、骨なしの魚を作るため、ピンセットでひとつひとつ小骨を抜き取り、“触診”による骨抜きチェックを行う作業、アナゴが腐っていないかのチェックのために、アナゴの匂いをひたすら嗅ぐ作業と、どれもこれも、気の抜けない単純作業の積み重ねです。

後半では中国に進出し、日本の消費者の“欲望”に応えてきた企業の立場から、現状をリポート。日本向けに設備を充実させた食品工場で、日本の食卓を支える多くの食品が作られ、それなくしては日本の食糧はまかなえない現状、そして、中国に“見放されたら”、日本の食糧事情は立ち行かなくなる現実を突きつけられ、考えさせられることの多い1冊です。

つみれ、甘エビ、かき揚げ…、どのように工場で作られているのか気になりませんか? そして、ゴマの選別とは??

食品工場を見学するには、完全防備の作業着を着なくてはいけません。顔の部分で出ているのは目だけです