子どもの行動に!? と思ったら…あなたの「理解」を広げる入門的専門書
公開日:2012/1/15
息子が高学年になった頃、学校のクラスが荒れていろいろ物議をかもしたことがある。そうした問題の一端を探る鍵がないか手にとったのがこの本だった。
いきなり発達障害はハードルの高い話だが、簡単にキレる子どもたちや、気持ちを表現できない子どもなど、クラスに普通にいそうな子どもたちへの「違和感」に触れており興味深く読んだ。
ただし、臨床現場からの一般的啓蒙が基本スタンスのため、なぜそういう子どもが増えているかという社会学的な分析はあまりないが、その分、現場で培った肌感覚による「変化」への視点が柔軟に描かれている。しかし、現代の子どもたちの抱える問題(?)は、多岐にわたるものだ。
この本が書かれた2004年から7年あまりが経つわけだが、この変化の激しい社会においては、さらにニュータイプの子どもが増えているかもしれない。それを大人は「理解不能」と切り捨てるのではなく、「どう理解するか」、そうした視点が大事なのだと本全体を通じて教えられた気がする。
それにしても、学校という空間にはさまざまなこどもたちがいるわけで、病気があるなしにこだわるのではなく、さまざまなこどもを見つめる上での前提知識として知っておくのは有効だろう。実際、誤解や思い込みが、本当に疾患を持つ子どもや親を追い詰めていることもあるわけだから…。
一方、こういう本を読むことで「もしかして…」とわが子や誰かを勝手に「病気」と判断しがちになるのは要注意。気になったなら判断は専門家にまかせ、本はあくまで実態を知り、不安や偏見をもたない「心構え」を知るために読みたいものだ。
当たり前のことだが、人は誰もが懸命に生きている。子どもの可能性に大人の都合でフタすることなく、彼らの力を信じておおらかに生きたいものだ、とあらためて思った。
まえがきより。この本で扱う疾患の概要がわかる
目次1 導入部は一般的な「違和感」が対象
目次2 各症例につっこんだ内容も充実
本文より
本文より 統計的な図版も複数収録されている