想像力の迷宮に迷い込んだような幻の生き物たちをめぐる驚異の蘊蓄学
更新日:2012/1/20
幻想博物誌
ハード : PC/iPhone/iPad/WindowsPhone/Android | 発売元 : 河出書房新社 |
ジャンル:教養・人文・歴史 | 購入元:eBookJapan |
著者名:澁澤龍彦 | 価格:463円 |
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澁澤龍彦というお方は、昭和を代表する知と想像力の巨人です。もっというと、知と想像力だけの巨人です。現実というものが、へたをすると欠落する。
たとえば今僕たちは、めずらかなものに触れたくて、希有なるものを食べたくて、そして少しは知見を広めたくって海外旅行に行ったりします。でも、世界中のけったいなものを頭の中に蒐集しまくって生きていた澁澤さんは、外国を飛び歩いたりは絶対にしませんでした。なぜなら、「(本に)書いてあるのになぜ出かけなければならないのか」というのです。
変人です。
さてそんな澁澤さんの、世界の縮図でもある書斎から次々とこぼれ出る幻想的な博物学、つまり幻の物たちをめぐる膨大な蘊蓄を、涎をたらして味わってみてはいかがでしょうか。
ギリシアのミノス島に築かれた巨大な迷宮の中心に居座っていたという牛の怪物、ご存じミノタウロスはもとより、蛇の髪の毛を持っていたというゴルゴン、不死鳥フェニクス、ドードー鳥、巨大蟻、人魚、などなどそのヘンテコぶりはとどまるところがありません。
とにかく恐れ入るのは、聞いたこともないインドの神話にもこんな蟻がいるだの、人魚の下半身はもとは鳥だっただの、どこから球を投げてくるか見当がつかないありさまなのです。煙に巻かれるとはこのこと。読んでるとこっちの気持ちがどんどん幻想的になって、人魚もフェニクスも実際にいるような心地に陥っていく。
知識は海のように深いけれど、日常的にはただの与太郎。そういう人にあなたはなれます。
むずかしげな漢字が多いので最初はちょっと戸惑うかも。我慢我慢
植物の実からなる羊の絵なんかあってめずらしく楽しい
あれからこれへと文献の森を跳梁しながら随想は続く
まだ一般的な動物でなかったころの犀の絵だ
お次はスキヤポデスなる一本足の人間をめぐるあれこれ (C)澁澤龍彦/河出書房新社