誰でも知っているあの童話で、ほんとうはこんな凄いことが起こっていた
公開日:2012/1/18
昔からのおとぎ話や童話というのは、たいていの場合著作権が消滅しているものだから、本にする時にストーリーやシチュエーションをねじ曲げ放題にねじ曲げてまとめられちゃったりすることがよくあります。
「かちかち山」のおばあさんて、確か狸に殺されて鍋にされ、おじいさんに食られるのがほんとだと思うのですけど、なかなかそういうふうに書いてある児童向けの絵本はないです。食べられちゃうのは子供にとってあんまりショッキングだから、心を傷つけないように、穏やかな展開にと考えるのは分かるのですが。
「ほんとうは怖いグリム童話」って本が前にはやったのもそのせいですね。口づてに伝えられてきた童話の原型は、思っている以上に残酷だったり奇形的だったり、もっといえば変態的だったりして、大人から見れば実に原初的なエネルギーに満ちた物語であるわけです。
ただね、子供の時誰でも経験があると思うのですが、お話を読んだり映画を見たりしている時に、オブラートに包まれない過激な表現にでくわして、ドキッとして、息がつまって、切ないような痛さに胸がつまり、それからしばらく嫌な夢を見るようになったり、闇や赤いものがむやみに恐ろしい少年に育ち、いわゆるトラウマというやつを背負うことは、それは社会の良識からは厭うべきことで避けなければならぬといわれるのだけれど、わたしが誰になるかという生きていることの根源の価値からいうと、とても大切な体験なのではないかと僕は思うのです。なにに傷つき、なにに毀たれたか、は人生のマイナスでもありプラスでもありうるはずです。
少し話がずれました。グリム童話です。僕たちがよく知っている西洋の童話のほとんどがグリム童話に入っているのですね。しかもこの完訳にはその原型をたもって。
「ラプンツェル」「ヘンゼルとグレーテル」「赤ずきん」「おやゆび小僧」「白雪姫」
それからたとえば「灰まみれ」というお話があって、これは僕らの知ってる「シンデレラ」のことです。シンデレラがふたりの姉にこき使われて休む時もベッドではなく、暖炉の灰の中で寝なければならないから「灰まみれ」と呼ばれていたことにちなみます。なかなか凄いのは、王子様が片方の靴をよすがに愛する人を訪ねてくると、足が大きくて入らない姉たちは指やかかとを切り落として無理矢理突っ込むのですが、王子は血まみれになった靴を見て、「アンタ、違う」というんですね。そこまで気がつかないこのぼんくら王子と一緒になって、生涯幸せだったのかどうか、それは書いてないのが粋というものかしら。
文章は翻訳調の堅さはなくて読みやすい
ところどころに挿し絵の入ってるのもうれしいし
恩を受けた蛙をこんなことしちゃって、でもその見返りが王子様って不条理くない?
これは猫と鼠が所帯を持ったお話。なんとなく結末が予想できるけど…
思ったまんまの、救いのないラストにちょっと感動 (C)Kayako Ikeda 2008