現代日本のダークヒーローはコレ!
公開日:2012/1/31
世の中には三種類の詐欺師がいる。
人を騙しその財物を奪い取る“シロサギ”。異性を餌として心と体、資産までも弄ぶ“アカサギ”。そして、シロサギとアカサギだけを餌として、カモから搾り取った金銭で肥え太った奴らの腐肉を啄む“クロサギ”―。
つまり「詐欺師を騙す詐欺師」のお話。
今回、黒崎の餌食になるのは贈答詐欺師。しかし、チンケなシロサギ潰しだったはずが、思いも寄らぬ凶悪事件へと展開していきます。
個人的には、これこそダークヒーロー! という印象です。
謀略をめぐらし、騙し、金をせしめ、地獄に落とすヒーロー。なかなかいないんじゃないでしょうか。義賊は金を巻き上げたらおしまいですが、本作では、“社会的に抹殺する”ところまでやってしまう。ダークもダーク。物理的に殺してしまわない所が、モア・ダークネスです。
また、コミックスでは中々描かれることのなかった、詐欺のカラクリが分かるのも文章ならではの魅力。贈答詐欺、倒産詐欺などを今後お考えの方にも自信を持っておすすめできます!
というのはあくまで冗談。
確かに、精密機械のように緻密に練られた計画を読むと、「これで明日からデビューできる!?」と思ってしまいますが、偽造ではなく“本物を量産する”というイカれた職人や、もうほぼ全能神みたいな桂木がいてこそなので、よいこの皆さんは決してマネをしないようにしましょう。
…と言うと、黒崎陣営が強すぎるような気がしないでもないですが、いやいや、そんなことはありません。それでようやく、この現代の懲悪ドラマは成立するのです。
かなしいかな、観善を捨て、懲悪に徹しなければならないほど、社会は悪意に満ちている、と。だからこそ、時折触れられる黒崎の心情や、クラブの美人ママ・さくらの心遣い、つららとの他愛ないのやり取りの輝きには、ハッとさせられるものがあるのです。
「おばあちゃんを見かけたら親切にして(恩を売って)いこう…!」
そんな美しい気持ちになったような、気がしなくもありません。
文章のテンポが良く、読みやすい。…カモなのにサギとはこれいかに
黒崎と桂木の出会いや、若かりし頃の桂木のエピソードもあり
輝度、文字サイズ変更などのほか便利なしおり機能も