「行ってらっしゃい」に思いを込めて…映画の原作となった衝撃ルポタージュ!
公開日:2012/2/29
「どうか今日一日、無事でありますように」。非情な裏社会でも、妻や母や恋人――女たちが支えている。短気をきわめた闘争心の強い男と渡り合う「姐さん」の暮らしぶり等を赤裸々に描いている。作家・家田荘子(いえだしょうこ)が2年にわたる体当たり取材で捉えた衝撃のドキュメント作。
「スイーツ」よりも「任侠」が好きなので、前々から気になっていた今作をぜひレビューしたい思っていました。早々に夢がかなってよかったです(笑)
「極道の妻たち」は1986年、東映配給網により公開されたヤクザ映画の原作。映画は主演女優を切り替えながらシリーズ化もされました。やはりみなさんが一番印象に残っているのは、関西弁を喋る岩下志麻が演じた姐さんではないでしょうか? このルポタージュには映画でモデルとなった姐さんたちのことが、深く濃く描かれています。
個人的に、思わずニヤニヤとしてしまった文章がいくつかあったので、その1つをご紹介します。「真琴姐さん(=仮名)」の「地獄の日々」で書かれている苦い経験話で語られるシーン。日本全国で行き当たりばったりの人生を送っていた時、“しょうもない”ヤクザ者に捕まってしまったと話します。現夫の杉田氏(=仮名)の比ではない暴力を、酒乱である彼(奥さん持ち)から受けていたとのこと。付き合いにとうとう限界がきた真琴姐さんは、彼と別れるために床屋さんに行き、女性にとっては髪は女の命。その命をバッサリと切り、丸坊主にしてしまいます。そして家に帰ってきた彼は姐さんの姿を見てビックリ。暴力を振るった後、捨て科白(セリフ)を残して奥さんのもとに帰っていく――。
このエピソードを読んだとき、映画「極道の妻たち」を知っている人たちには涎ものでしょう。劇中で、真琴姐さんをモデルにした女性が出ているのですから。「うちは極道に惚れたんやない。惚れた男がたまたま極道やったんや」という科白は有名ですよね。それに似た科白を、真琴姐さん、そして他の極妻たちは声をそろえて残しています。
映画とは一味違う「極道の妻たち」。著者の諦めない根性と、極妻たちの一途な想いを、ひしひしと学びました。映画を知っている人も知らない人にもぜひ、読んでほしい1冊です。
極妻たちは今日も「何事もなく帰って来られますように」という思いを「行ってらっしゃい」のひと言に込めて夫の大きな背中にかけているのでしょうか。
目次。姐さんたちの名前をタッチすると、タッチした姐さんのお話にジャンプできます!
作家のふとした疑問からこのルポタージュは誕生した…!
「一生愛人でもかまわない」と思うほど、みなさんは誰かを愛したことがありますか?
その人が極道者だとしても、一途に人を愛す…温子さんの言葉にすごくキュンとしました