「行ってらっしゃい」に思いを込めて…映画の原作となった衝撃ルポタージュ!

小説・エッセイ

公開日:2012/2/29

極道の妻たち

ハード : PC/iPhone/iPad 発売元 : 文藝春秋
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:電子文庫パブリ
著者名:家田荘子 価格:432円

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「どうか今日一日、無事でありますように」。非情な裏社会でも、妻や母や恋人――女たちが支えている。短気をきわめた闘争心の強い男と渡り合う「姐さん」の暮らしぶり等を赤裸々に描いている。作家・家田荘子(いえだしょうこ)が2年にわたる体当たり取材で捉えた衝撃のドキュメント作。

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「スイーツ」よりも「任侠」が好きなので、前々から気になっていた今作をぜひレビューしたい思っていました。早々に夢がかなってよかったです(笑)

「極道の妻たち」は1986年、東映配給網により公開されたヤクザ映画の原作。映画は主演女優を切り替えながらシリーズ化もされました。やはりみなさんが一番印象に残っているのは、関西弁を喋る岩下志麻が演じた姐さんではないでしょうか? このルポタージュには映画でモデルとなった姐さんたちのことが、深く濃く描かれています。

個人的に、思わずニヤニヤとしてしまった文章がいくつかあったので、その1つをご紹介します。「真琴姐さん(=仮名)」の「地獄の日々」で書かれている苦い経験話で語られるシーン。日本全国で行き当たりばったりの人生を送っていた時、“しょうもない”ヤクザ者に捕まってしまったと話します。現夫の杉田氏(=仮名)の比ではない暴力を、酒乱である彼(奥さん持ち)から受けていたとのこと。付き合いにとうとう限界がきた真琴姐さんは、彼と別れるために床屋さんに行き、女性にとっては髪は女の命。その命をバッサリと切り、丸坊主にしてしまいます。そして家に帰ってきた彼は姐さんの姿を見てビックリ。暴力を振るった後、捨て科白(セリフ)を残して奥さんのもとに帰っていく――。

このエピソードを読んだとき、映画「極道の妻たち」を知っている人たちには涎ものでしょう。劇中で、真琴姐さんをモデルにした女性が出ているのですから。「うちは極道に惚れたんやない。惚れた男がたまたま極道やったんや」という科白は有名ですよね。それに似た科白を、真琴姐さん、そして他の極妻たちは声をそろえて残しています。

映画とは一味違う「極道の妻たち」。著者の諦めない根性と、極妻たちの一途な想いを、ひしひしと学びました。映画を知っている人も知らない人にもぜひ、読んでほしい1冊です。

極妻たちは今日も「何事もなく帰って来られますように」という思いを「行ってらっしゃい」のひと言に込めて夫の大きな背中にかけているのでしょうか。


目次。姐さんたちの名前をタッチすると、タッチした姐さんのお話にジャンプできます!

作家のふとした疑問からこのルポタージュは誕生した…!

「一生愛人でもかまわない」と思うほど、みなさんは誰かを愛したことがありますか?

その人が極道者だとしても、一途に人を愛す…温子さんの言葉にすごくキュンとしました