「人生このままでいいのだろうか?」 コーチングのプロが語る人生を輝かせるコツ

暮らし

公開日:2018/2/27

『本当の自分を生きる 人生の新しい可能性をひらく8つのキーメッセージ』(榎本英剛/春秋社)

 誰もが「人生このままでいいのだろうか?」と思ったことがあるのではないだろうか。今の仕事が向いていないと感じたときや思いもよらない出来事に遭遇したとき。順調な人生を送っているときさえ、ふとしたきっかけで他の生き方はなかったのだろうか?と。

 自分だけの自分らしい人生を送ることを本書では「本当の自分を生きる」と表現している。自分探しのことか?と思う人もいるかもしれないが、そうではない。「自分はこれからの人生をどう生きたいのか」という問いに読者が向き合い、自分で決める指針を与えてくれるのが『本当の自分を生きる 人生の新しい可能性をひらく8つのキーメッセージ』(榎本英剛/春秋社)だ。

 著者の榎本英剛氏は、留学したアメリカでコーチング(可能性を引き出すコミュニケーション)と出会い、コーチングのコーチ養成機関CTIジャパン(現ウエイクアップ)を創立。その後、順調な経営を手放し、海外生活を経て持続可能な未来を市民の手でつくる世界的な活動トランジション・タウン(注1)やチェンジ・ザ・ドリーム(注2)を日本に紹介するなど変化に富む経歴の持ち主だ。

advertisement

 その榎本氏が本当の自分を探り、生き方を決めていくために必要な8つのキーメッセージを20数年の自らの社会人人生のエピソードを添えてわかりやすく伝えている。悩み葛藤し選択してきた内容に可能性を引き出すプロとしての視点を加え描く。読者が自分の人生の選択に後悔なく一歩を踏み出すヒントになる。

 ここでは、印象深かった2つを紹介したい。

キーメッセージ4:人生で起こることには、すべて意味がある

 自分にとって不本意で辛い出来事にぶつかると、「なんでこうなるのか」と苦しくなることがある。著者は自分の人生に起こる出来事に意味を見出すことを「意味づけ」としている。

「本当の自分を生きるためには、人生の主導権を起こる出来事から自分の手に取り戻す必要があります。出来事の犠牲者であり続ける限り、それは自由な人生とは呼べません」

 ここで、著者は、人生の主導権を握るには出来事を自分に力を与えるように意味づけすることが重要という。そうしないと出来事の犠牲者になると解く。確かに自分の力をそぐような意味づけをしていくと、人生が辛いものばかりになる。ふりかえったとき、嫌な出来事だったけど今が良くなるきっかけになったと言いたいものだ。

キーメッセージ7:理由があるから行動するのではなく、行動するから理由がわかる

 何かをしようとしたとき、「こうすれば、こうなる」という期待と「失敗したらどうしよう」という恐れや不安で動けなくなることはないだろうか? そんな行動を妨げる考えに対して著者は、結果が保証されているものなどなく、人事を尽くし、結果は天に委ねる。とりあえずやってみることが大切という。

 8つのキーメッセージを受け取ったら、自分の可能性を試してみたくなるだろう。本書全体が榎本氏の経験を事例にしながら、読者一人ひとりの人生を尊重しているのが伝わってくる。自分を受け止めて、背中を押してくれるコーチをそばに置く感じだ。自分の人生を本当に生きたいと思う人に手にとってもらいたい。

文=水野矩美加

(注1)トランジション・タウン
ロブ・ホプキンスによってイギリス南部にあるトットネスという町から始まった市民運動。「トランジション」とは「移行」を意味し、石油を始めとした化石燃料に過度に依存した暮らしから、もともとその地域にある資源を活かした持続可能な暮らしへの移行を、市民が自発的に自らの創意工夫によって実現していくことを目指している。

(注2)チェンジ・ザ・ドリーム
2005年にアメリカの非営利団体パチャママ・アライアンスが開発したプログラムの名前であると同時に、そのプログラムの中核に据えた市民運動の総称でもある。「地球上のすべての人が、環境的に持続可能で、社会的に公正で、精神的に充実した生き方を実現する」ことを目的としている。