村山由佳の描くリアルな性愛、賛否両論の渦!

小説・エッセイ

公開日:2012/3/9

ダブル・ファンタジー(上)

ハード : PC/iPhone/iPad 発売元 : 文藝春秋
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:電子文庫パブリ
著者名:村山由佳 価格:432円

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「おいしいコーヒーのいれ方」シリーズで甘酸っぱい恋の世界を披露し、「星々の舟」で直木賞作家となった村山由佳が、多方面に波紋を投げかけた問題作。
電子書籍版は前後編に別れたかなりの長編で、読み応えは満点である。

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既婚の人気女流脚本家・奈津(35歳)が主人公。
尊敬する作家に誘われ、衝動的に夫を捨てて家を飛び出してしまった奈津は、そこで改めて「男」という生き物の本質と、自らの止めようのない性欲の深さを知る。もう止まれない、引き返せない。そんな奈津の揺れる心が丁寧に、そして大胆に綴られている。

この作品はホントに賛否両論があると思う。
“女性視点で語られる止めようのない欲情”だけならば、その辺りにいくらでも転がっているエロ小説なのだが、それを「一流の女流作家が書いている」というのがポイント。パーツだけに注目すれば、それはそれは挑発的な官能小説なのかもしれないが、作品を通して読むと全くそういう感覚に陥らない。どちらかと言えば暗く、そしてどんよりと重い空気が漂ってくるような不快感に終始する。にも関わらず読書を中断することができないのは、何かいけないものを偶然に覗き見してしまい、それから目が離せなくなる、といった類いの罪悪感。これを異様なまでに丁寧に心情描写されてしまったら、さすがに読むのを止められない。好き嫌いはともかく、間違いなく惹きは強い。

そして、「ダブル・ファンタジー」というタイトルが意味深。込められた意味は中盤で解明されるのだが、その解釈は注目に値する。この部分だけはなるほど、と思った。

男性としての感想は、否応なく「怖い」。
仮に自分の好きになった女性がこの主人公と同じような性格・性癖を持っていたら、きっと生きて行くのもイヤになる。だから、「女性がこれを読むとどうなんだろう?」という興味は大きい。共感する、なんて意見が多々出ちゃったらどうしよう…。

煽りにあるような「ニュータイプの官能小説」という部分は期待しない方がいい。
少なくとも男性は。


シーンだけ切り取れば、かなり濃厚な描写の官能シーンなのだが、前後のストーリーを重ね合わせると途端に重々しくなる

最近ではすっかり主流になったドットブック形式を採用、機能は豊富だが、しおり機能はやはり見当たらず

重宝するテキスト検索、該当する単語を前方からハイライト表示していく

iPad閲覧でのテキストサイズは8段階、こちらの画面は最小サイズ・見開き表示で、通常の文庫本よりもやや文字が小さくなる

文字サイズ最大で見開き表示、この大きさであれば視力に不安のある人でも問題なく読書可能

縦表示に大きめの文字サイズも有効、通勤時等の座れない電車ではベストな表示