八百万の神様たちが私のワンルームにやってきた。ドタバタあったかな生活が始まる

ライトノベル

公開日:2012/3/14

やおろず 前編

ハード : PC/iPhone/iPad/WindowsPhone/Android 発売元 : イースト・プレス
ジャンル: 購入元:eBookJapan
著者名:裕龍ながれ 価格:500円

※最新の価格はストアでご確認ください。

霊感や信仰心がないフツーの女子大学生・主人公の高原澄香(たかはら・すみか)は、大好きだった祖母の葬儀が終わった夜、和服姿で若年寄風な「家神(いえがみ)」と出会う。祖母が亡くなったことで、実家の改築をすることになり、祠が取り壊される。住み家を求めて、家神をはじめ便所の神やかまどの神など実家に住んでいた「八百万(やおよろず)の神」が、都会でひとり暮らしをする澄香の安いワンルームに、総勢、引っ越してきて―

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ストーリーも登場キャラクターたちもほっこりかわいい、現代ファンタジーです。
一人で暮らしていた澄香の部屋は、神々が引っ越してきたことで様子が一変。

「水道の蛇口にはびしょびしょに濡れた小さな人が座っている。全身を映す鏡の前には、髪型をきっちりと整えた小さな人が立っている。テレビの上にも、ノートパソコンのそばにも、米びつの中にも…。」(作中より)

とまあ、プライベートは皆無ですが、とりあえず刺激的な生活が始まるわけです。

神々の中でも中心的存在である家神は、神様らしい仕事はせず、常にのんびりとしているようで、ふと気ままに偉そうな講釈をぶつ。少年というより男児のような便所の神はビジュアルこそかわいらしいのですが、甘えん坊で機嫌を損ねると妨害行為で用を足しづらい。おじいさん風のかまどの神は「自炊をしろ。嫁のもらい手がないぞ」とやかましくいう。まるで大家族で住んでいるかのような賑やかさのなかで、澄香の傷心は徐々に癒えていきます。

ちなみに、おばあちゃんのなまりの影響で「やおよろず」ではなく「やおろず」と澄香が覚えてしまったことから、タイトルがきています。強烈なおばあちゃんっ子です。

児童文学のにおいがふんわり匂ってくる本作。児童文学というと、教育的な意図や配慮を根っこに持つ印象が強く、同時に「子ども向け」であることが多いのですが、じつはジャンル的には10代後半から20代前半を層に捉えた“ヤングアダルト”に向けられた児童文学作品もあり、本作はいわずもがな、そちらに属するのではと思います。

今の大学生は、学力と同時に精神年齢まで低下している、などといわれます。実態はどうあれ、大学生が精一杯がんばって生きる姿を応援してくれる良作です。


主人公の女子大学生・澄香(左下)とユカイな仲間たち

家神やかまどの神など、神様たちの個性的なビジュアルが楽しい。本文を読み進めるなかで、「どんなビジュアルだったかな?」と思い出したくなったときのために、しおりを付けておくといいですよ

泣き虫っ子の澄香が、神々の支えで成長していくさまに期待

もの知りの家神による、節分の講釈。豆知識ネタも光る

ところで家神ってどんなビジュアルだったっけ? 操作欄の「← → ページ移動」から、主要ページとしおりを付けたページに戻ることができる (C)古戸マチコ/イースト・プレス イラスト:裕龍ながれ