動物的感覚を呼び起こされる1冊

公開日:2012/3/22

カンの正体 「直勘力」で逆境に強くなる

ハード : PC/iPhone/iPad/WindowsPhone/Android 発売元 : イースト・プレス
ジャンル:趣味・実用・カルチャー 購入元:eBookJapan
著者名:桜井章一 価格:800円

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すみません。麻雀のことは何も知らないのです。著者が伝説の雀士ということも今回初めて知りました。読後、興味が湧いていろいろネットで検索してみると、桜井氏がますますすごい人物であることがわかり、次いでYouTubeで動画まで探してみて、あ。目が「いっちゃってる」という感覚が強烈にしました。あの目つきの人が書いたものにしてはあまりにソフトだという第2印象まで発生し。すごいんですねぇ。麻雀の世界は。

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男の勝負の世界は数々あれど、机を囲んで、あれほどの殺気のある目つきになるゲームは他にないのではないでしょうか。囲碁はなんとなく文豪の趣だし、ポーカーはヤサ男風でキザが多そうだし。半と丁のあれは動きが少ない。花札も音の迫力に欠けたりします。そうしてみると、麻雀の独特な美学が多少浮き彫りになってくるでしょうか。著者は20年間無敗の記録を持ち、現在は麻雀の道場を経営。麻雀塾かと思いきや、その内容はほぼスパルタの戸塚ヨットスクール並みなようです。麻雀を打つことでなく、勝負とは、ひいては人生とはを学びに行く場。そこで教えるのが、本書に書かれているような教訓の数々。タイトルから、また成功者の自己啓発本のジャンルかな? と思ったのですが、氏の教えはいたって簡単。

1.常識や知識を捨てる
2.自然から学ぶ
3.弱いもの(とくに子供)から学ぶ
4.譲る力を知る

というのが基本。麻雀の牌を捨てる音で、対戦相手の調子を見るとか、勝ち続けている運を譲ってやることで、自分の運を操作していけるとか、動物的感覚の異様に鋭い人なのだということが、ここかしこでわかる内容。

果たして凡人が読んで、実生活に役に立つのかは疑問ですが、麻雀をされる方なら、確実に啓蒙される指摘の数々なのでは。勝負事なのに「勝ち負けを捨てれば、カンは鋭くなる」という教えも意表をついています。これを読めば麻雀が強くなるというダイレクトなタイプの教本でも、マニュアルでもなく彼の人生観そのもの。桜井ファンにはたまらないバイブルになりそう。そして麻雀音痴の①読者すら納得・説得させられてしまう、迫力の目つきが文章にもにじみ出てきて、強烈な印象を確実に残す1冊。


現代人は視覚に頼りすぎている、と。確かに

直勘力の鋭い人の4条件

牌を捨てるときの動作の美しさも重要、と。かっこいいなぁ

運、自分が持ってたら当然手放したくないですが、師は違う。譲れとおっしゃいます (C)桜井章一/イースト・プレス