事件なんて起こらない、そんな世界があってもいいじゃないですか
公開日:2012/3/26
何だか忘れていた童心が思いがけず蘇ってしまうかもしれない、そんな作品です。とりあえずタイトル通りの内容を想像したら見事に裏切られました(笑)。
この著書は早い話が「未知の生物の観察日記」なんですよね。
僕なんかは幼少時によく昆虫をじっと見ているのが好きなタイプだったんで、かなり主人公の女の子の好奇心に寄り添えたかなっていう気がします。アリンコの穴をよくほじくり返したっけ、なんてくだらない思い出ばかりが浮かびますが、まさにそんな感じのハートフルストーリーです。
実際、このお話の観察対象は「妖精」と呼ばれる新人類さんなんですけど。
またこの妖精さんたちが可愛いんですよ。つたない語力で主人公と懸命にコミュニケーションを取ろうとする様は、健気であり、また可笑しくもあり、こんな生物がいたら時間を忘れてずーっと見ていたいと思わされますね。大げさな起伏はありませんが、ただただ妖精さんを見守り愛でるという風変わりな作品です。しかしあえて言いますと、“そこがイイ!”のです。
作者もあとがきで書き記しているように、小学校の学級文庫に置かれていてもおかしくはない、いわゆる童話と言ってもいいのかもしれません。本作はそれだけ低い年齢層にも親しみを持って読んでもらえるように作ってあるので、読書の入門としてもうってつけかも。それに文体にクセもないので読み心地は抜群です。
時代はバトルじゃないんです、平和な日常にちょっとほっこりするような出来事があるだけでいいじゃないですか。ちょっとのほほんとした世界にトリップしたい気分になったらどうぞ本書をお読みください。きっとあなたをほっこりとした気持ちにさせてくれるでしょう。
書きだしは随分廃退的です
妖精さんの、贅沢病に駆られた日記
最後に妖精の観察結果を報告書にまとめます