見事に騙してみせましょう。たとえ相手が幽霊でもね！

仕事柄というか、趣味だからというか、ホラーはいろいろ読んでいるのだが、断言します。
この『幽霊詐欺師ミチヲ』、アイデアが非常に斬新である。読んだら思わず、おっと身を乗り出してしまう。新鮮なエンターテインメントに飢えている読者なら、これを見逃す手はないだろう。

ストーリーはこうだ。
借金を苦に自殺しようとしていた青年・大神ミチオは、突如現れたカタリという男に500万円で命を「買われる」。黒スーツに身を包んだカタリはいかにもうさん臭げ。命を救われたミチヲは、カタリにある仕事を命じられた。

その仕事とは、山奥のトンネルに現れる幽霊を騙して、生前貯めこんだ財産を吐き出させること。つまりは幽霊相手の結婚詐欺だ。臆病なミチヲは、凄まじい形相の怨霊・マミコを相手に、必死にナイスガイの役割を演じることになる。ああ、ミチヲの運命やいかに？

世に騙されやすい人間、信じやすい人間がいるのなら、騙されやすい幽霊、信じやすい幽霊もいるのではないか。この作品の大きなポイントはここにある。まさに発想の転換。奇才・黒史郎ならではのひねくれたアイデアが秀逸だ。

そのうえキャラクターがいい。臆病だが心根の素直なミチヲ。サディスティックでクールなカタリ。カタリに影のように付き従う黒犬のカネコ。ミチヲとの結婚を夢見る怨霊・マミコもどこか憎めない名キャラクターだ。顔面が崩れていてとっても怖ろしいのに、そのうち愛らしく思えてくるから不思議である。

文庫版ではつい先日3巻が発売されたところだが、電子版は現在2巻まで配信中。まずは騙されたと思って読んでみて。ユーモラスでダーク。キャラ萌えでしかも本格ホラー。これは絶対ハマると思うよ。