読んだら後戻りはできないぞ! 伝説のカルト貸本マンガの復刻版
公開日:2012/4/3
復刻版 怪談人間時計
ハード : PC/iPhone/iPad/WindowsPhone/Android | 発売元 : 太田出版 |
ジャンル:コミック | 購入元:eBookJapan |
著者名:徳南晴一郎 | 価格:1,050円 |
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初めて読んだときにはビックリしたなあ。
もうあまりにも強烈なインパクト。ちょっと大げさな言い方をするなら、それまで読んできたマンガの常識がすべてひっくり返されたような経験だった。
だってほら、見てくださいよ。この絵を。
巧いのかそうでないのか、といえば確実に後者だろう。1962年という時代背景を考えても、貸本漫画という媒体を考えても、これはちょっと稚拙に過ぎるのではないか。キャラクターの顔はみんな怖いし、セリフまわしは不自然だし、第一ストーリーが変だよ。何度読んでもよく分からない。あまりにもカルト過ぎるのだ。
なのだが。
ここには巧いとか下手だとか、そういう問題を忘れさせてしまうような、一種独特な感銘がある。「お前が本当に読みたかったのは、この『人間時計』みたいなマンガなんじゃないのか?」と作者にジリジリ詰問されているような気がする。で、思わず「あっ、その通りです」と言ってしまいたくなるような、そんな迫力があるのだ。
ストーリーはこうである。
時計屋の一人息子・タダシは時計を眺めるのが好きな内気な少年。ある日、彼の腕時計が3時間進んでしまうようになる。時計が人間に対して、反乱を起こしたのだろうか? やがてタダシは夢とも幻覚ともつかない異様な世界へ、足を踏み入れてゆくことになるのだった。
著者がこの作品に与えたジャンルは「SF怪談」だが、むしろシュルレアリスムの悪夢の記述に近い。何が起こるか一切予測がつかないし、描かれることはすべて不気味で不条理だ。そのうえ、ギャグとも本気ともつかない描写が多々散りばめられていて、読者としては混乱するしかない。どうすればこんな話を思いつくんだろう。まったく謎だらけの作品だ。同時収録されている『猫の喪服』はこれに輪をかけてすごい。ここまでクレイジーな話は世界中探しても珍しいだろう。続けて読むと、確実に意識が飛ぶ。
久しぶりに電子版で読み返してみて、作者の「真剣さ」にあらためて戦慄した。そう、作者・徳南晴一郎は本気なのだ。デッサンが狂っていても、ストーリーの辻褄が合わなくても、作者の表情はいやに真剣だ。額に汗が浮いている。そこが怖いところだし、同時にまた感動できる部分でもあるのだろう。やっぱり大好きな作品です。
この色づかいを見よ。毒々しいのにポップな扉ページ
これが主人公・声タダシだ。みんなよろしく!
お手伝いさんの顔が怖い。笑った理由もよく分からない
さらに怖いのがママ。このマンガのキャラは皆こんな感じだが
同時収録作『猫の喪服』もかなり壮絶ですよ (C)徳南晴一郎/太田出版