緊張してスピーチが苦手という人は、ジョブズのあのテクニックを真似よう! 会話に沈黙を活かす術

ビジネス

公開日:2019/1/22

『「沈黙」の会話力』(谷原 誠/フォレスト出版)

 スティーブ・ジョブズはプレゼンで「沈黙」をうまく使っていた。オバマもキング牧師も、さらにはヒトラーも演説で「沈黙」を多用したという。なにも言葉に詰まったわけではない、わざと黙ったのだ。なぜ彼らは聴衆の前でそんなにも「沈黙」したのか? そこには、ある狙いがあった。

『「沈黙」の会話力』(フォレスト出版)の著者・谷原誠氏は、弁護士だ。弁護士といえば法廷で相手に考える余地を与えないほどスラスラと話すイメージがある。けれども、本書は「“沈黙”こそが最強のコミュニケーションテクニックである」と明言する。一体どういうことなのだろうか?

■スピーチがうまい人ほど、沈黙や間をうまく使っている

 ジョブズは「iPhone」発表のプレゼンの冒頭で「2年半、この日が来るのを待っていた…」と言ったあと7秒も沈黙した。ヒトラーは演説の壇上に上がって群衆に向かって話し始めるまで、30秒も沈黙した。彼らは沈黙をすることで、相手の気持ちをコントロールしたのだ。「これから何を話すんだろう?」と聴衆の注意を引きつける。そこで、印象的な一言を放つ。聴衆の心に、衝撃と説得力を与えるのだ。

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 これは落語やお笑いでも用いられる「緊張と緩和」の技法だ。人は「うまく話さなければならない」と思うと沈黙を恐れ、矢継ぎ早に話してしまう。口からスラスラ言葉を出さないといけないと思ってしまう。

 しかし、本当に演説がうまい人は、大きくボディランゲージをし、ステージを歩き回り、沈黙や間を作る。沈黙のタイミングは、大事な言葉の前や、聴衆に疑問を投げかけたあとが特に効果的だ。「おや、なんだろう?」「なぜだろう?」と期待させて、ドカンと決めるのが重要だ。

 沈黙は演説やプレゼン、営業や交渉などのビジネスシーンはもちろんのこと、私たちの日常会話でも応用できるだろう。大事なときにあえて沈黙すると、あなたの発する言葉の重みは変わるだろう。

■「あれ?」という疑問を、期待につなげるテクニックとは――

 人に「期待させる」ということは、自分や商品をアピールするために必要なことだ。

 あなたは、『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』というベストセラー本のタイトルを覚えているだろうか? 心理学に「ツァイガルニック効果」という用語がある。これは、「人は、達成できたことよりも、達成できなかったことや中断していることのほうをよく覚えている」という現象のことだ。「さおだけ屋はなぜ潰れないのか?」という、その場で即答できない中途半端な“沈黙”を提示され、「なぜだろう? 理由が知りたい!」と思い、ますます内容が知りたくなるのだ。

「あれっ?」という疑問を一瞬与えて、次に「この気持ちを解消したい!」と思わせることができれば、しめたものだ。「沈黙」は「期待」に変わる。

「いつも明るい優秀な同僚の営業について行ったら、彼は人が変わったかのように黙っていた」というエピソードが本書で紹介されている。良い営業に必要なのは「沈黙」だという。「沈黙」は、客の思考のペースに寄り添う役割もしながら、こちらの言葉に重みと説得力を持たせる。さらに、営業を受けるほうにも沈黙は有用だろう。客が黙れば話している営業側が焦り、客の狙う展開に持っていけるかもしれない。

「喋り」に対して緊張してしまうと、誰しも「言葉を多く使えばいい」と思いがちだ。けれども、あなたが「沈黙」をうまく生かすことができれば、一気に喋る場が得意なものになるかもしれない。「沈黙」は、社会を生きるうえで誰にとっても間違いなく使えるテクニックであろう。

文=ジョセート