チーズの専門家ならずとも、うなる1冊

公開日:2012/4/12

チーズ入門

ハード : PC/iPhone/iPad/WindowsPhone/Android 発売元 : 日本食糧新聞社
ジャンル: 購入元:eBookJapan
著者名:服部宏白石敏夫 価格:648円

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スペインに住んでいると、チーズはとても日常的な食べ物です。
熟成の長くハードタイプで、羊乳の代表的チーズであるマンチェゴや、乳牛の畜産で有名なアストゥリアスの山羊のブルーチーズ、バスクのやはり羊乳で比較的臭みの少ないイディアサバル、トロトロの中身をすくって食べるカセレスのトルタ・デ・カサール等々。枚挙に暇がありませんが、残念なことにこの本では、スペインチーズはスイス・フランス・イタリア勢に押されてあまり紹介されていません。

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にも関わらず、この本を強く、ことに専門職の方にお勧めしたいのは、その詳細さゆえ。このシリーズの常として、食品の歴史、日本への伝播の様子、製造過程からチーズの分類法、チーズの製造設備の機械図まで、マニアックなものがすきな人なら、すっかり嵌ってしまう内容。食べ物の話ならなんでも面白いと思う私なので、お世辞にも華やかとは言えないこうした類の本にかえってパッションを感じてしまうのですが、読みながら、これは永久保存版と思うことしきり。チーズ業界にはつとに有名は1冊なのかもしれません。

ありがたいことに、チーズの製造工程をさまざまなアングルからとらえているおかげで専門用語にあふれていること。これって、通訳・翻訳には本当に便利なんです!! こと、チーズのように西洋のほうが文化的に発展している場合、カタカナでそのまま表現が残っていたり、こちらで多用する単語の上手い日本語訳がなかったりするものですが、この1冊の日本語専門用語レベルも高い。カタカナも多いけれど、日本語としてとてもわかりやすい。しかもチーズ輸入に関する法令や、はては日本酒とチーズのマリアージュにまで言及されていて、製造者、それに関わる関連業者、飲食業界でもソムリエなどという職業の人々にまで幅広く、専門度深く楽しめる内容。

確かに、チーズの種類の網羅に関しては現地の出版物に譲るところが多いでしょうが、これだけ包括的にチーズを捕らえた入門書、海外でも稀有なのでは。入門というにはあまりに深い内容。その謙虚さと誠実な構成に拍手の一冊です。


こういう表、小学校でもよく使いますね。わかりやすい

チーズと大豆製品の類似性についての指摘も興味深い

こんな機械まで説明してくれる本、なかなかありません

ヨーロッパ主要チーズに関する分析も詳しく

チーズ関連グッズまで網羅 (C)服部宏・白石敏夫/日本食糧新聞社