ルーティーンこそが実はカッコイイんだと思える1冊
公開日:2012/4/19
メタルカラーの時代3
ハード : PC/iPhone/iPad/WindowsPhone/Android | 発売元 : 小学館 |
ジャンル:小説・エッセイ | 購入元:eBookJapan |
著者名:山根一眞 | 価格:637円 |
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著者が前書きで明確にするように「メタルカラーの人々の見えない努力、真摯な仕事によってもたらされた」日本の豊かさ。この本で語られるのは新幹線の走行を安全を確保する気の遠くなるような保線作業や、リニアモーターカーにかける夢、1cm角にレンズ200万個を実現したビデオ、あの高速の自動改札機がいかに開発されたか、などなど。高度経済成長期から現在にかけて開発された技術の、世界トップレベルの知識と商品化までの経験談が魅力的に綴られています。
対談式の展開が、素晴らしいです。理系・科学・数字全くダメな私でも、どんどん専門の世界に飲み込まれてゆくダイナミックな会話であっというまに読了。日本の職人文化の地道さ、正確さ、執拗なまでの試行錯誤、その過程をも楽しめる専門家たちの根気。そういったもの、日ごろの忘れてしまいがちなのではないでしょうか。
日本のすべてのコンフォートの根底に、こうした職人気質が関わっているのだと感動を新たにします。例えば自動販売機の商品が出てくる時間「日本人がいらいらせず待てる時間」までも計算して商品開発をするメーカー、自動改札機の開発にのべ3000人のパートを雇って「通過」させ、実験データと重ねてゆく業者。娘が熱さましに渡してくれたアイスノンからアイディアが始まり、衝撃吸収材の開発に100個の卵をスーパーで買うことから始めた研究者。メタルカラーの人たちは、日本の経済成長を支えてきたにも関わらず、表舞台に立つことはとても少ないように思えます。その謙虚で地道な姿勢がまた日本人らしく、愛国心をくすぐられること間違いなし。理系の研究者、彼らの世界の「我慢」「忍耐」「根気」のスケールと、「夢を描ける能力」が実はそのまま、かつての「日本らしさ」ではなかったでしょうか。
モノつくりの場から脱しているように見える日本。こういう1冊ほど、ルーティーンの中に幸せを見失っている人、進路に悩む若い世代にエールの代わりに贈りたいものです。文句なしにおもしろい。3から始めてしまいましたが、1、2と取り寄せることにします。
ひらめきから研究へ。第一歩は日常の素材で試験費も安く!
エレベーターの乗り心地は立てた10円玉が倒れない振動
新幹線の保線に人生をかけている技術者が「新幹線で寝るのが好き」と
研究費捻出のためには、実験タイミングも予算審議会に合わせて! (C)Kazuma Yamane 2004