アイヌが語る、自然との共生の教え
公開日:2012/4/24
アイヌの昔話 ひとつぶのサッチポロ
ハード : PC/iPhone/iPad/WindowsPhone/Android | 発売元 : 平凡社 |
ジャンル:教養・人文・歴史 | 購入元:eBookJapan |
著者名:萱野茂 | 価格:648円 |
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皆さんの故郷には、古くから言い伝えられてきた物語はありますか。
私の生まれ育った北海道には先住民族「アイヌ」の人々が語る物語があります。それは広大な大地と自然を舞台にした昔話。しかし、これだけ地域にまつわる話なのに、実際に住んでいた私でさえ、全く聞いたことのないお話ばかり。このことに新鮮さを感じつつ、これは道内、道外問わずに人々に伝えてゆきたい珠玉の物語だと思いました。
本書には、アイヌの人々の間で語り継がれてきた昔話二十編。また作者のアイヌへの思いやつながり、簡単な解説が書かれた、まえがきとあとがきも収録されているので、アイヌをほとんど知らない私でも安心して読むことができました。
この本書に収められているアイヌの昔話は2種類に分けられます。ひとつ目は人間が主人公の物語。この場合は自らが経験したことを語り、人の行いとして“してよいこと“”よくないこと”を説いていくお話です。
ふたつ目はカムイ(神的な存在)が主人公の物語。これがアイヌの物語の最大の面白さだと思います! カムイは動物や植物であったり、多く存在するのですが、なんと…生活用品のなべがカムイのお話もあります。この主人公がカムイのお話を“カムイユカ”と言います。
本書のカムイユカの中でも、私のイチオシは第3篇の「暇な小なべ」です。
この物語はアイヌの人々の伝統的な儀式、イヨマンテ(熊送り)を狩られる熊の目線で語っています。アイヌ文化で熊は、毛皮と肉を土産に神の国から降りてきた存在として大切にされていて、熊神と呼ばれています。イヨマンテは熊を狩り、もてなして熊の衣に宿った神を神の国に返す儀式です。
主人公の熊神がもてなしを受けにある日、山を下りて行き一人のアイヌに狩られるところから物語が始まります。アイヌが想像した独自の自然との共生の仕方がよく描かれていておもしろいです。
アイヌの文化は興味深いです。本当に独特な世界観を持っています。
少しでも興味を持たれたなら手に取ってみてはいかがでしょうか。
まえがきには、執筆への経緯も語られている
アイヌ語の響きはやっぱり独特
このお話は訳したものと原文がある 読み比べるとおもしろい
すべての物語は教訓の形で終わっている (C)萱野茂/平凡社