かつて中国に存在した義理人情がここにあり!

公開日:2012/4/26

水滸伝 -まんがで読破-

ハード : PC/iPhone/iPad/WindowsPhone/Android 発売元 : イースト・プレス
ジャンル:コミック 購入元:eBookJapan
著者名:施耐庵企画・漫画 価格:600円

※最新の価格はストアでご確認ください。

本作は僕が「水滸伝」と名の付くものに触れた初めての作品となりました。
漫画ということもあり、おそらくは原典より省かれた面も多々あるかと思いますが、僕は初めての水滸伝が本作でとても良かったと思います。これを描いた作者は、限られたページ数の上で、しっかりと物語の本質をそぎ落とすことなく読者に届けることができたのではないでしょうか。初めての水滸伝というには本当にうってつけです。

advertisement

「義理と人情」、「忠義を尽くす」。本作はこの言葉に集約されていると言ってもいいくらいに、その絆や国を憂い決起する様が濃密に描かれています。それのどれもが熱く、男心をくすぐるんですよ。中国にこんな熱い物語があるなんて正直驚きました。恥ずかしながら、任侠道のようなジャンルは日本の専売特許とばかり思っていたものでして…(笑)。

しかし、僕から見ると本作には主人公という主人公がいないように感じました。いや、いないというよりもいすぎて選べないと言った方が良いかもしれませんね。ある者は上司に職を追われ、ある者は罪を肩代わりし、ある者は育ててくれた義理によってそれぞれの正義を選ぶ。これらが自らが信じた正義の名の下に、どんどん集まってきてしまうんです。その集団の名前が「梁山泊」。元は山賊でしたが、運命的な出会いを経て勇士が集うにつれて、その存在意義は国を思う志士の戦闘集団へと変化していきます。

ここまで見ると何だか革命志士たちの宴のような印象を持たれるかもしれませんが、僕が彼らに重ねたのは坂本龍馬を筆頭にした明治志士たちでした。国を思うがゆえに為さなければならないことを遂行する。何も国家の転覆を狙ったわけではなく、あくまでもその国に暮らす民のためを思い戦いに興じた彼らは無血開城でその偉業を達成しましたが、水滸伝の登場人物にもそれと似た志を感じました。

いやしかし、国事とは人の心を熱くさせるなにかを持っていますね! 「国を思う」それだけでそこにドラマが生まれてしまうのですから、古今東西、このジャンルが廃れることはないでしょう。そのルーツともなった物のひとつがこの「水滸伝」なのでしょう。幕末が好きな方や、男の生き様に心を奮わせたい方にぜひともオススメしたい1冊です。


乱世に現れる志士たちの演舞開始

この物語の元凶ともなる強欲な高官、高球

友人の無実の罪に嘆く友情

勇気ある夫の妻として、足かせにならぬように自害してしまうシーンは感動です (C)バラエティ・アートワークス/イースト・プレス